文章だけでは伝わりにくいテーマを、インフォグラフィックによってわかりやすく解説したい。
そう考えていても、どの内容を図にするべきか、どのような見せ方が適しているかを判断するのは簡単ではありません。
比較、時系列、構造、因果関係など、情報の性質によって適した図解は異なります。
見栄えのよい図を配置しても、内容と形式が合っていなければ、かえって読者を迷わせることもあります。
株式会社ジー・ビーでは、長年にわたり、初学者にも理解しやすい図解書を制作してきました。
本記事では、その経験をもとに、インフォグラフィックを誌面に取り入れる際の考え方と、編集者・デザイナーが担う役割を紹介します。
記事の目次
インフォグラフィックは「情報の種類」に合わせて選ぶ
インフォグラフィックとは、情報を図、グラフ、イラスト、表などによって視覚的に整理する表現です。
ただし、文章を図に置き換えれば、必ず理解しやすくなるわけではありません。
大切なのは、読者に何を理解してもらいたいのかを整理したうえで、情報の性質に合う表現を選ぶことです。
たとえば、複数の対象の違いを見せたい場合には、比較表や対比図が適しています。
手順を伝える場合にはフロー図、時間の変化を示す場合には年表、要素同士のつながりを説明する場合には関係図が候補になります。
一つの見開きの中に、説明したい情報が複数含まれていることもあります。
比較と手順が混在している場合、すべてを一つの図にまとめると、視線の流れが複雑になりがちです。
必要に応じて図を分ける、文章に残す内容を決めるといった整理が欠かせません。
図解を選ぶ作業は、装飾を選ぶ作業ではありません。
情報を分類し、読者が理解しやすい順番へ組み替える編集作業です。
図解の形式を決める前に、伝える内容を分解する
インフォグラフィックを作る際、最初から完成形を想像しようとすると、見た目の印象に判断が引っ張られます。
先に行うべきなのは、原稿に含まれる情報の分解です。
まず、見開きで伝えたい結論を一つに絞ります。
そのうえで、結論を理解するために必要な情報を洗い出し、それぞれがどのような関係にあるかを整理します。
主な関係は、次のように分けられます。
- 違いを見せる「比較」
- 順番を伝える「工程」
- 時間の流れを示す「時系列」
- 原因と結果を示す「因果関係」
- 全体と部分を示す「構造」
- 人物や組織のつながりを示す「関係」
- 数量や割合を示す「数値」
この分類ができると、図解の形式を選びやすくなります。
反対に、情報の関係が整理されていないままデザインへ進むと、矢印や囲みが増え、何を中心に見ればよいのかわからない誌面になってしまいます。
編集者が行うのは、原稿を短く要約することだけではありません。
どの情報を主役にするか、何を補足へ回すか、どの順番で見せるかを決めることも重要な役割です。
類書だけでなく、異なるテーマの本からも見せ方を探す
誌面設計の参考資料を探すときは、同じテーマの類書を確認するのが基本です。
読者層、情報量、よく使われる図解、既刊書との差別化などを把握できるためです。
一方、図解のアイデアは、同じ分野の書籍だけから得られるとは限りません。
歴史書の年表が、企業の成長過程を説明する図に応用できることがあります。
健康書で使われている人体の模式図が、別分野の構造説明の参考になる場合もあります。
ビジネス書のマトリクスが、人物や出来事を分類する誌面に役立つこともあります。
重要なのは、扱っているテーマではなく、その図が何を整理しているかを見ることです。
株式会社ジー・ビーでは、制作する書籍の類書を確認するだけでなく、異なるジャンルの書籍にも日頃から目を通しています。
図の形をそのまままねるのではなく、情報を整理する考え方を蓄積するためです。
「この図はなぜ理解しやすいのか」「どの順番で視線が動くのか」「文章と図はどう役割分担しているか」と分解して見ることで、別のテーマにも応用できる引き出しになります。
編集者とデザイナーでは、判断する内容が異なる
インフォグラフィックを使った誌面は、編集者とデザイナーの共同作業によって形になります。
編集者は、原稿の内容を読み取り、何を図にするかを判断します。
見開きの結論、情報の優先順位、図解の形式、必要な要素、文章との分担を整理する役割です。
デザイナーは、編集者が整理した情報を、実際に読者が追える形へ設計します。
文字の大きさ、色、余白、線、矢印、イラストなどを使い、視線の流れと情報の階層を整えます。
役割は分かれていますが、編集者が内容だけを渡し、見せ方をすべてデザイナーに任せればよいわけではありません。
「ここは比較で見せたい」「この三つは同じ階層」「最初に結論を見せ、その後に理由を読ませたい」といった設計意図を共有する必要があります。
反対に、編集者が細かなレイアウトまで固定しすぎると、デザイナーが持つ視覚表現の選択肢を狭めます。
編集者が情報の構造を示し、デザイナーが視覚的な解決方法を考える。
この分担が明確になると、修正時にも「見た目の好み」ではなく、「情報が伝わっているか」という基準で話し合えます。
図解を増やすほど、わかりやすくなるとは限らない
図解書を作る際に起こりやすいのが、すべての情報を図にしようとすることです。
図やイラストが多ければ、誌面はにぎやかになります。
しかし、図解が連続すると、どこが重要なのかが見えにくくなる場合もあります。
文章で簡潔に説明できる内容まで無理に図にすると、読者は図の読み方を理解するために余計な負担を感じます。
複雑な内容を小さなスペースに詰め込めば、文字が細かくなり、かえって読みづらくなります。
図に向いているのは、文章だけでは関係や違いを想像しにくい情報です。
一方で、注意点、背景説明、条件による違いなどは、文章で補ったほうが正確に伝わることがあります。
図解と文章のどちらが優れているかではなく、それぞれが得意な役割を分けることが大切です。
図解を入れるか迷ったときは、「この図によって、読者は何を早く理解できるのか」と問い直します。
答えが明確でなければ、図にする必要がない可能性があります。
初校では、見た目より先に情報の流れを確認する
デザインされた初校が届くと、色やイラスト、全体の雰囲気に目が向きます。
しかし、インフォグラフィックの確認で最初に見るべきなのは、情報の流れです。
見出しを読んだあと、どこへ視線が移るのか。
図の起点と終点がわかるか。
矢印が何を示しているか。
色分けの意味が統一されているか。
本文を読まなくても、図の要点をつかめるかを確認します。
図の中にある文章も、通常の本文と同じように校正が必要です。
文字を減らした結果、主語や条件が抜けていないか、短くしすぎて意味が変わっていないかを見ます。
説明要素を追加するだけでは、図は改善しません。
情報が伝わりにくい場合には、要素を増やすより、主役ではない情報を削るほうが効果的なこともあります。
図の形を修正する前に、そもそもの情報整理へ戻る判断も必要です。
初校は、完成したデザインを眺める工程ではありません。
編集時に考えた情報の優先順位が、誌面の上でも機能しているかを検証する工程です。
まとめ|伝わる図解は編集段階の情報整理から始まる
インフォグラフィックを使った誌面を作る際は、次の三点が重要です。
- 情報の種類に合わせて、比較図、フロー図、関係図などを選ぶ
- 編集者が情報の構造を整理し、デザイナーと設計意図を共有する
- 図を増やすことを目的にせず、文章との役割分担を考える
見栄えのよい図を加えるだけでは、理解しやすい誌面にはなりません。
読者に何を伝えるのかを絞り、その情報に適した形を選ぶことが、インフォグラフィックを生かす出発点です。
- この記事の監修者
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株式会社G.B.
雑誌・書籍・ムックの編集・出版を中心に、
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