編集プロダクションやデザイナーから提案されたデザイン案を見て、「なんだかいまひとつだ」と感じることもあるでしょう。
ただし、その感覚がうまく言語化できないまま修正指示をしても、意図したものが上がってくるとは限りません。
「読みやすく」「すっきりと」「かっこよく」「素敵な感じに」といった漠然とした言葉から思い浮かべるイメージは、人によって異なるからです。
書籍制作のデザイン確認で大切なのは、どこをどんなふうに修正し、どのような印象を目指すのかを、制作に関わる人が同じゴールを見られる形で伝える必要があります。
この記事では、インハウスのデザイン部門も持つ株式会社ジー・ビーの編集チームが、修正指示の整理方法と、認識のずれを防ぐ「上手な戻し方」を紹介します。
記事の目次
修正指示は「感想」ではなく「判断材料」として戻す
デザイン案を見たときに抱く第一印象は、修正指示をかけるうえで大切な入口です。
「少し読みにくい」
「想像していた雰囲気と違う」
「もっとインパクトを強くしたい」
こうした感覚自体に問題はありません。
ただし、このような「感想」をそのまま伝えるだけでは、編集担当者やデザイナーがどこをどう直せばよいかを判断できません。
たとえば、書籍のカバーデザインに対して、「もっとすっきりとしたデザインに」という指示をしたとします。
この「すっきり」が意味するものには、さまざまな可能性があります。
- 使う色を減らす
- 文字の書体を変える
- 写真やイラストを小さくする
- 余白を広く取りたい
- 情報量を減らす
- 装飾を控えめにする
どれも、「すっきり」という言葉から考えられる修正の方向性ですので、上がってきた修正版を見たときに、また違和感を抱いてしまうかもしれません。
修正指示を戻す際には、まず自分が感じた違和感を分解してみることが重要です。
- どこに違和感があるのか。
- その違和感は、何が原因だと考えられるか。
- 修正した結果、どんなイメージを目指すのか。
この3つを整理するだけでも、伝わり方は大きく変わります。
たとえば、
『もっとすっきりとしたデザインに』
ではなく、
『文字や装飾などの要素が多く、タイトルに目が向きづらくなっています。
キャッチコピーや装飾を減らし、タイトルが最初に目に入るようにしたいです』
と伝えます。
後者であれば、変更したい箇所と、その理由、目指す状態をはっきりと共有することができます。
| 曖昧な指示 | 具体化する三つの視点 | 具体的な修正指示 |
|---|---|---|
|
「もっとすっきり」 「もっと目を引く」 「もう少しかっこよく」 |
どこを変える? タイトル、写真、色、余白、装飾 なぜ変える? 情報が多く見える、タイトルが目立たない、想定読者と印象が合わない どう見せたい? タイトルを最初に読ませる、信頼感を出す、若い読者へ届く印象にする |
「装飾を減らしてタイトル周辺の余白を広げ、タイトルが最初に目に入る構成にしたい」 |
| 修正箇所・理由・ゴールをそろえると、デザインの意図が伝わる。 | ||
認識をそろえるために使う「参考イメージ」
言葉だけでイメージを伝えにくいときは、参考となるデザインを共有することも有効です。
参考資料には、同じジャンルの書籍だけでなく、雑誌、広告、Webサイト、商品パッケージなども使えます。
ただし、参考イメージを提示するときは、「これと同じようにしてください」で終わらせないことが大切です。
参考にしたい部分を具体的に伝えます。
- この本の余白の取り方を参考にしたい
- この広告の文字の強弱に近づけたい
- この配色の落ち着いた印象が企画に合っている
- この表紙のようにタイトルを一番目立たせたい
- 写真の扱い方は参考にしたいが、色調は変えたい
1つのデザインは、文字、色、写真、余白、レイアウトなど、複数の要素によって成り立っていますので、参考資料だけをそのまま渡しても、どんな要素を参考にすればよいのかが伝わりません。
依頼側は配色を参考にしてほしかったのに、デザイナーは文字の組み方を寄せるかもしれません。
これでは、参考資料を出しても認識のずれが残ります。
【実例】「もっと目を引く」という指示を、打ち合わせで具体化
株式会社ジー・ビーが、ある書籍のカバーデザインを制作したときの実例を紹介します。
完成したデザイン案を出版社の編集者へ提出したところ、「もう少し目を引くデザインにしたい」という修正意見が戻ってきました。
ただ、それをそのままデザイナーへ伝えると、認識のずれが生じる可能性がありました。
そこで、メール上のやり取りだけで修正を進めず、一度打ち合わせの場を設けました。
出版社の編集者に、現在の案のどこが気になるのかを確認します。
さらに、イメージに近い書籍や広告のデザインを挙げてもらいました。
参考例を見ながら、
- 残したい要素
- 減らしたい要素
- 最初に目に入ってほしい情報
- 色の方向性
- 想定している読者への見え方
を1つずつ整理していきます。
その内容をデザイナーと共有し、次の修正案を制作したところ、次回の提出で承諾を得ることができました。
重要だったのは、曖昧な言葉を無理に自分なりに解釈してデザインへ反映しなかったことです。
ぼんやりとした違和感の正体をはっきりさせないまま進めても、修正のたびに別の案を出し続けることになります。
そうなる前に一度立ち止まり、「誰にとっても同じゴールが見える状態」をつくる。
そのほうが、結果として制作を早く、正確に進められます。
編集とデザインが近いから、修正の意図を共有しやすい
出版社が編集プロダクションに制作を発注する場合、修正指示は、出版社から編集プロダクションへ渡り、さらにデザイナーへと共有される流れが一般的です。
関わる人が増えるほど、言葉の意味が少しずつ変わる可能性があります。
伝言を進めていくと、最初の意図から離れていく場合があるのです。
その点、株式会社ジー・ビーにはインハウスのデザイン部門があり、編集者とデザイナーが同じフロアで動いているため、細かい確認を絶えず繰り返すことができます。
クライアントからの修正指示を単に転送するのではなく、
- なぜこの修正が必要なのか
- 出版社の担当者はどこを気にしているのか
- 読者へどのように見せたいのか
- 他のページへどのような影響があるのか
まで共有しながら進めます。
デザイン修正では、1つの指示に対して複数の解決方法があります。
編集者とデザイナーが意図を直接すり合わせることで、指示どおりに直すだけでなく、企画全体に合った方法を検討できます。
修正対応の柔軟さとは、修正回数を増やすことではありません。
認識のずれを早く見つけ、同じゴールを見ることです。
まとめ|伝わる修正指示には、具体的なゴールがある
書籍のデザイン確認では、気になった箇所を伝えるだけでなく、修正の目的まで共有する必要があります。
「すっきり」「かっこいい」などの言葉だけで指示を終わらせない
修正する箇所、理由、目指す状態の3つを整理する
参考イメージは、どの部分を参考にしたいのかまで伝える
曖昧な指示のまま進めると、修正案が提出されるたびに「なんか違う」という状態が続きます。
修正指示を具体化することで、よりよい提案を引き出すための「判断の軸」を明確に共有することが大切です。
株式会社ジー・ビーでは、書籍やムックの企画、編集、デザイン、校正、進行管理まで一貫して対応しています。
社内の編集者とデザイナーが連携し、修正の意図を整理しながら、企画や読者に合った誌面づくりを進めます。
- この記事の監修者
-
株式会社G.B.
雑誌・書籍・ムックの編集・出版を中心に、
その他にも広告媒体の企画・編集・制作著作権の管理・運用、翻訳、その他上記に付帯する一切の業務を行う。
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