監修者(ドクター・大学教授等)とのスムーズなコミュニケーションと原稿確認のコツ

医師や大学教授などの専門家へ監修を依頼したものの、一般読者向けの表現に難色を示された。
原稿を確認してもらったら、専門的な内容に大きく直されてしまった。
書籍やコンテンツの制作では、監修者との認識のずれが進行を止めることがあります。

こうしたずれは、監修者が一般向けの表現を理解していないから起きるわけではありません。
制作側が「何を、誰に、どのように届ける本なのか」を十分に説明していないことも大きな原因です。

監修者とスムーズに進めるには、原稿を渡して確認をお願いする前に、企画の目的、読者、監修者の役割、表現の方針を共有する必要があります。

この記事では、専門家監修の書籍や図解本を数多く制作してきた株式会社ジー・ビーの編集チームが、監修者とのコミュニケーションと原稿確認を円滑に進める考え方を紹介します。

監修者との認識合わせは、原稿確認より前に始まる

監修者とのやり取りというと、完成した原稿を送り、内容に誤りがないかを見てもらう場面が思い浮かびます。

しかし、原稿確認の段階までに企画の方向性が十分に伝わっていなかった場合、監修者と制作サイドとの間の認識が、すでにずれている可能性があります。

専門家が日頃扱う論文、講義資料、医療現場での説明と、一般向け書籍では、情報の見せ方が異なります。

一般書では、読者が最初から専門知識を持っているとは限りません。
そのためキャッチーな見出し、身近な例、イラスト、図解などを使って、内容へ入りやすい入口をつくります。

監修者がその前提を知らないまま原稿を見れば、

「なぜ、ここまで言いきってしまうのか」

「この表現では軽く見えないか」

「説明が足りないのではないか」

と感じるのは自然です。

制作側にとっては読者へ届けるための工夫でも、監修者からは内容を単純化しすぎているように見えるかもしれません。

だからこそ、最初に共有すべきなのが「企画のコンセプト」です。

  • この本は誰に向けたものか
  • 読者はどの程度の知識を持っているか
  • 読後に何を理解してほしいか
  • なぜ図解やイラストを使うのか
  • 専門性をどこで担保するのか
  • 監修者に何を確認してほしいか

こうした企画の土台を先に共有し、認識のずれがないかを原稿確認の前から始めるのです。

一般書のコンセプトは、具体的な完成像まで伝える

コンセプトを伝えるといっても「一般読者向けに、わかりやすくした解説する本です」という説明だけでは、監修者が完成形を想像するのは難しいでしょう。

「わかりやすい」「親しみやすい」「ライトな見せ方」といった言葉は、人によって意味が異なるからです。

制作側はポップなイラストを多く使ったイラスト図解本を想定していても、監修者は文章中心の入門書を思い浮かべているかもしれません。

認識をそろえるには、抽象的な説明だけでなく、具体的な材料を示します。

たとえば、次のようなものです。

  • 同じシリーズの既刊
  • 近い読者層を想定した類書
  • ページ構成のラフ
  • 見出しや本文のサンプル
  • イラストや図解のサンプル
  • 監修者に確認してほしい範囲

特に有効なのが、実際の誌面に近いサンプルです。

監修者に「一般向けだから理解してください」と求めるのではなく、どのような本を目指しているのかを判断できる材料として提示することが大切です。

監修者にとってのメリットも、依頼時に明確にする

一般読者向けの書籍は、監修者にとって普段の研究や診療、教育とは異なる仕事である場合も多いものです。

一般向けの書籍に名前を出すことや、親しみやすい表現に対して監修者として責任を持つことに、不安感や抵抗感を抱く場合もあります。

特に、イラストや印象的な見出しを使う企画では、

「専門性が軽く扱われないか」

「研究内容を誤解されないか」

「自分の普段の活動と合っているか」

と慎重になるのは当然です。

そこで、制作側の都合だけでなく、監修者にとってこの企画に参加する意味も伝えます。

たとえば、

これまで届きにくかった一般層への認知が広がる

自分の専門分野に興味を持つ人が増え、裾野が広がる

誤解されやすいテーマについて、専門家の立場から正しい情報を示せる

といった価値です。

これらは、監修者を説得するための営業文句として伝えるのではありません。

一般向けに表現を変えることが、専門性を軽くするためではなく、専門家の知見をより広く届けるためだと共有します。

その目的に納得できれば、監修者も「どこまでなら一般化できるか」「どこは正確に残すべきか」を、制作側と一緒に建設的に考えやすくなります。

原稿確認では、「何を見てほしいか」を明確にする

監修者へ原稿を送り、「全体をご確認ください」とだけ伝えると、確認範囲が曖昧になります。

監修者は、専門的な正確性だけを見ればよいのか。
文章表現まで直すべきなのか。
図解の見せ方についても判断するのか。
依頼側が範囲を決めなければ、監修者はすべてに責任を持たなければならないように感じます。

その結果、文章表現まで専門的な言い回しへ戻されたり、細かな修正が大量に入ったりすることがあります。

原稿確認を依頼するときは、次の例のように、確認してほしい項目を分けて示します。

事実関係……医学的・学術的な説明に誤りがないか。

用語……専門用語の使い方や定義が適切か。

表現の限界……一般向けに単純化したことで、誤解を招く内容になっていないか。

図解・イラスト……描写が事実と矛盾していないか。
誤った印象を与えないか。

情報の鮮度……制度、治療法、研究状況などが現在の情報と合っているか。

同時に、制作側で判断する部分も明確にする必要があります。
見出しの読みやすさ、文章のリズム、誌面上の情報量、イラストの配置は、企画意図と読者像を踏まえて制作側が調整すること、などを伝えておきましょう。

もちろん、監修者から表現上の懸念が出れば確認します。
ただし、すべての文章を専門家の文体へ戻すわけではありません。
監修者が見る領域と、編集者が判断する領域を共有しておくことで、原稿確認を進めやすくなります。

【実例】親しみやすい医療図解に難色を示されたケース

過去に株式会社ジー・ビーで、医療分野の難しいテーマを、一般読者向けにイラストと図解で伝える書籍を制作したときの事例を紹介します。

専門性の高い内容でしたが、読者にはなるべく身構えずに読んでもらいたい。
そのため、文章だけで説明するのではなく、親しみやすいイラストを使った誌面を検討していました。

ただ、監修者にとっては、普段扱っている専門的な内容を、どこまでライトな見せ方にしてよいのか判断しにくい状態でした。
あまりに砕けた印象になると、内容が軽く見える可能性があります。
医療情報である以上、誤解を招く見せ方も避けなければなりません。

監修者が難色を示したのは、一般向けにすること自体への反対ではありません。
完成する本の方向性と、専門性がどのように守られるのかが、まだ十分に見えていなかったのです。

そこで、同じシリーズで制作された既刊をいくつか紹介しました。
それらの本が、専門的な内容をどのように一般読者向けに展開したのか。
そして、一般読者に知見が届いたことによって、監修者への一般層からの問い合わせが増え、正しい知識を世の中に広める機会になったというサクセスストーリーも伝えました。

過去の実例を踏まえて今回の狙いを示したことで、監修者は完成形を具体的に想像しやすくなり、前向きな姿勢で参加してもらえることになりました。

編集プロダクションは、監修者が判断しやすい環境をつくる

監修者とのコミュニケーションで求められるのは、専門家とうまく話すための特別な話術ではありません。
監修者が何を判断すればよいのかを整理し、必要な情報を先に渡すことです。

株式会社ジー・ビーでは、専門家監修の書籍や、一般向けの図解本を数多く制作してきました。
その中で蓄積されるのは、専門家の知見をやさしく書き換える技術だけではありません。

  • 企画の狙いをどの段階で説明するか
  • 完成像を何で見せるか
  • 監修範囲をどう切り分けるか
  • 修正の理由をどう読み取るか
  • 編集側の判断をどこまで説明するか
  • 専門家の懸念を誌面へどう反映するか

といった、確認を進めるための設計です。

監修者が専門性を守り、編集サイドが一般読者への伝わり方を整える。
双方がそれぞれの役割を理解し、同じゴールを目指せる状態をつくれることが、編集プロダクションの存在価値です。

まとめ|監修者との信頼は、判断材料の共有から生まれる

監修者との原稿確認をスムーズに進めるには、完成した原稿だけを渡すのではなく、企画の前提から共有する必要があります。

読者像と本のコンセプトを最初に伝える

類書や誌面サンプルを示し、完成形を具体的に共有する

監修者に見てほしい範囲と、編集サイドが判断する範囲を分ける

一般向けの表現に不安を感じる監修者へ、ただ理解を求めても認識はそろいません。

なぜこの見せ方にするのか。
専門性をどこで守るのか。
監修者の知見が、どのような読者へ届くのか。
判断に必要な材料を示すことで、監修者は安心して制作へ参加できます。

株式会社ジー・ビーでは、医師や大学教授などの専門家が監修する書籍・ムックの制作にも対応しています。
企画説明、監修範囲の整理、原稿や図解の確認、修正内容の調整まで、監修者と制作チームの間に立って進行します。

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この記事の監修者
株式会社G.B.

株式会社G.B.

雑誌・書籍・ムックの編集・出版を中心に、
その他にも広告媒体の企画・編集・制作著作権の管理・運用、翻訳、その他上記に付帯する一切の業務を行う。

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