図鑑や百科、ビジュアルブックには、できるだけ多くの情報を載せたいものです。
写真やイラスト、解説文、データ、分類、年代など、扱う素材も多くなります。
しかし、情報量が多ければ多いほど、読者に喜ばれるとは限りません。
膨大な情報や素材をやみくもに詰め込んでも、読者を迷わせてしまいます。
大量の情報を美しく整理するには、情報の優先順位を決め、編集とデザインが連携して読みやすさを設計する必要があります。
この記事では、数多くの雑誌やムック、図鑑などを制作してきた株式会社ジー・ビーが、情報整理とエディトリアルデザインの考え方を紹介します。
記事の目次
大量の情報は、すべてを平等に扱わない
図鑑や百科を制作するとき、「網羅性」は大きな価値になります。
できるだけ多くの項目を掲載することで、読者は一冊の中から知りたい情報を探せます。
テーマの全体像もつかみやすくなるでしょう。
ただし、「すべてを網羅すること」と「すべてを同列で見せること」は別です。
たとえば動物図鑑の場合、すべての動物を同じページ数、同じ説明文の量、同じ大きさの写真やイラストを割り当てたら、誌面のレイアウトはきれいに整って見えるかもしれません。
しかし、読んでいて変化がないため、読者を飽きさせてしまう可能性があります。
どこに注目すればよいのかが分かりにくく、読者が特に知りたい情報も、ほかの項目の中に埋もれてしまうでしょう。
そこで必要になるのが、情報の優先順位の整理です。
たとえば、次のような観点から、素材ごとの扱いを分けます。
- 読者からのニーズが高いか
- テーマ全体を理解するうえで重要か
- 見た目や性質に強い特徴があるか
- 図解や写真で大きく見せる価値があるか
- ほかの項目との比較に適しているか
重要度が高いものは、大きな図版と十分な解説で見せます。
中程度のものは、要点を絞って紹介します。
補足的なものは、一覧性を保ちながらコンパクトに載せます。
情報に優劣をつけることは、価値の低い項目を雑に扱うことではありません。
読者がどこに注目し、どの順番で理解するとよいかを示すことです。
分類は「情報をしまうため」ではなく「理解を助けるため」に使う
情報や素材が多い本では、それらをどのような順番で並べるかが重要です。
たとえば動物図鑑の場合、単純に五十音順で並べれば、読者にとっては目当ての動物を探しやすい本になります。
しかし、それだけでは「各動物の関係性」が見えません。
ライオンとラッコが同じページに載っていたり、ピューマとピグミーマーモセットが隣り合っている動物図鑑では、ちぐはぐ感を抱く読者のほうが多いでしょう。
この場合は、生息地域別、生態別といった分類で整理するほうが読みごたえが上がるはずです。
このように、時代順、分類別、地域別、用途別、特徴別など、テーマによって適した整理軸は異なります。
分類は、情報を整理棚へ押し込む作業ではなく「なぜこの順番になっているのか」「なぜこの分類になっているのか」を読者へ伝える設計です。
順番に意味があれば、読者は一つひとつの情報だけでなく、本の全体構造まで理解できます。
「いま、どこを読んでいるか」を示す
図鑑や百科の読者は、最初のページから順番に読むとは限りません。
気になる項目を探して途中から開いたり、目次や索引から目的のページへ移動したりなど、何度も前後を行き来する本でもあります。
そのため、どのページを開いても、「いまはどの章にいて、何を読んでいるのか」がひと目で分かるようにする必要があります。
読者の現在位置を示す方法には、次のようなものがあります。
- ページ端のインデックス
- 章ごとの色分け
- 柱に入れる分類名
- ページ上部の階層表示
- 章ごとのアイコン
インデックスは、単なる装飾ではありません。
本全体の構造を示し、読者を迷わせないためのナビゲーションです。
ただし、誌面上に要素を増やしすぎると、かえって読みづらくなるので注意が必要です。
【実例】150種類以上の恐竜の魅力を100ページに凝縮
過去に株式会社ジー・ビーで、150種類以上の恐竜を、約100ページで紹介する子ども向けムックを制作したときの事例を紹介します。
一冊で多くの恐竜を楽しめるのは、読者にとって大きな魅力です。
ただし、すべての恐竜を同じ大きさで並べてしまっては、同じ調子の誌面が続き、読みごたえが弱くなります。
そこで、まず監修者と相談しながら、各恐竜の扱いを大・中・小に分けました。
判断材料にしたのは、子どもからの人気や知名度、恐竜の特徴、テーマ全体での重要度、語れる特徴がどれだけあるか、などです。
大きく扱う恐竜……見開きや大きなスペースを使い、全身イラスト、特徴、データ、ワンポイント解説を組み合わせる。
中程度で扱う恐竜……主要な特徴を押さえつつ、ほかの恐竜と比較できる形で紹介。
小さく扱う恐竜……一覧性を重視し、要点と基本データをコンパクトに掲載。
この強弱によって、限られたページ数の中にたくさんの恐竜を掲載しながら、誌面にリズムをつくりました。
大きな恐竜が登場するページでは、子どもが立ち止まって楽しめます。
小さな項目が並ぶページでは、多くの種類を見比べることができます。
並べ方も、ランダムにはしませんでした。
時代順と分類別を組み合わせ、恐竜同士の関係性が見えるように整理します。
知りたい恐竜を探しやすいだけでなく、「この時代にはどのような恐竜がいたのか」「似た特徴を持つ恐竜には何がいるのか」といった子どもたちの学びにもつながる設計です。
もちろん、ページ上部にはインデックスを入れ、読者がどのページを開いても、いま読んでいる時代や分類が分かるようにします。
大量の情報をとにかく収めることだけが目的ではなく、強弱、整理の基準、読みやすさを設計することで、150種類以上の恐竜を、探しても、眺めても、順番に読んでも楽しめる形へ整理した事例です。
編集とデザインの密な連携がカギ
大量の情報や素材を扱うビジュアルブックにおいては、編集者による情報整理とデザインは別々の工程ではありません。
- どの情報を大きく扱うか
- どの分類で並べるか
- 何を文章で説明するか
- 何を図版で見せるか
- 共通フォーマットをどこまで使うか
- どこで変化をつけるか
これらを編集者とデザイナーが早い段階から相談し、多様な誌面デザインが想定されることを共有しておく必要があります。
株式会社ジー・ビーでは、編集チームとインハウスのデザイン部門が同じフロアで動いているため、高度なビジュアライズが求められる書籍も、密に情報交換をしながら進めることができます。
まとめ|大量の情報は、優先順位と現在位置で整理する
図鑑や百科、ビジュアルブックでは、情報を多く集めるだけでなく、どう見せるかまで設計する必要があります。
扱いの大・中・小を分けてメリハリをつける
読者が理解しやすい分け方で情報を並べる
インデックスや色分けの工夫で、読者を迷わせない
大量の情報をすべて同じように並べても、読者には情報の価値が伝わりません。
何を大きく見せ、何を比較させ、どこで立ち止まってほしいのか。
編集者が情報の意味を整理し、デザイナーが視覚的な順序へ変えることで、膨大な素材は読みやすい一冊へと仕上がります。
株式会社ジー・ビーでは、図鑑や百科など、大量のビジュアル素材を扱う書籍を数多く制作しています。
情報の分類、台割、原稿、図版整理からデザインに至るまで、一冊全体の設計をご相談いただけます。
- この記事の監修者
-
株式会社G.B.
雑誌・書籍・ムックの編集・出版を中心に、
その他にも広告媒体の企画・編集・制作著作権の管理・運用、翻訳、その他上記に付帯する一切の業務を行う。
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