書籍や小冊子、Web記事では、たった一つの事実誤認がコンテンツ全体の信頼を損なうことがあります。
人名や年代、統計、制度、動植物の生態など、確認すべき内容は企画によってさまざまです。
監修者や校閲者(情報の正確性を確認する専門職)に依頼したとしても、その人選や依頼範囲が適切でなければ、確認漏れは起こります。
ファクトチェックで大切なのは、「誰かが見てくれるだろう」と考えないことです。
どの情報を、誰が、何を根拠に確認するのかを整理し、必要に応じて複数の確認経路を重ねます。
この記事では、高い専門性が求められる数多くの書籍・ムックを制作してきた株式会社ジー・ビーが、監修者、校閲者、そしてAIツールを組み合わせたファクトチェックの手法を紹介します。
記事の目次
ファクトチェックは、確認する「人」の選び方から始まる
「ファクトチェック」という言葉から、原稿ができたあとに情報の正確性を一つずつ調べ上げる作業を思い浮かべる人もいるかもしれません。
もちろん、個々の記述を資料と照らし合わせる作業は必要です。
ただし、その前に決めなければならないことがあります。
それは「誰に、どの範囲を確認してもらうか」ということです。
ここが曖昧なまま、監修者や校閲者に依頼しただけでは、十分な確認体制にはなりません。
書籍における監修者は、主に専門的な内容の妥当性を確認する役割を持ちます。
しかし、すべての監修者が同程度の専門性を持っているわけではありません。
研究や実務の経験が豊富な専門家が監修者になる場合もあれば、企画によっては、発信力や知名度が高さで選ばれる監修者もいます。
どちらが優れているか、という話ではありません。
企画の中で、何を期待して起用するのかを明確にする必要があります。
知名度や発信力を重視して監修者を選ぶなら、専門的な事実確認を別の監修者が補うなどの布陣も考えられます。
人選と役割を分けて考えることが、ファクトチェックの出発点です。
校閲者・校閲会社にも得意分野がある
校閲者や校閲会社へ依頼すれば、どのようなテーマでも同じ精度でファクトチェックをしてもらえる、と考えるのも危険です。
校閲者・校閲会社によって、基本技術こそ共通しているものの、得意とする分野や対応範囲には違いがあるからです。
そのため、校閲会社を選ぶ際には料金や納期だけでなく、次の点も確認します。
- 類似テーマの実績があるか
- どこまでの事実確認を行うか
- 参照した資料を示してもらえるか
- 専門分野の校閲者を手配できるか
依頼内容が曖昧なままでは、発注側が想定していた確認内容と、校閲者が行った作業にずれが生じます。
人を手配するだけではなく、企画に応じた専門性と確認範囲を見極めることが大切です。
知名度先行型の監修者とともに、ファクトチェックを伴走した事例
過去に株式会社ジー・ビーで、子ども向けのイラスト動物図鑑を制作したときの事例を紹介します。
監修者は、インターネット上で広く知られる動物系インフルエンサー。
企画との親和性や読者への訴求力があり、子どもや保護者にも内容を届けやすい存在として、クライアントの出版社が選定しました。
一方で、扱うすべての動物について、研究者と同等の専門性を持つわけではありません。
監修者自身も、その点には懸念を持っていました。
そこで、監修者の見解だけを根拠に原稿を進めるのではなく、編集側でも一つひとつの内容の信頼性を補強する工夫をしました。
監修者の見解を裏づける、信頼性の高い別の資料を用意し、それを併せて確認してもらいながら、ファクトチェックを進めることにしたのです。
こうして、発信力のある監修者の強みを生かしつつ、専門性の不足し得る部分を編集側から補いました。
重要なのは、監修者が専門家ではないことを問題として扱わなかった点です。
企画上の役割を理解し、どこに追加の確認が必要かを見極めました。
一人の監修者へすべてを任せるのではなく、資料と編集の確認を重ねて支える。
この体制によって、企画の魅力と内容の信頼性を両立させました。
補助的確認手段としてのAIツール
ファクトチェックは基本的に監修者や校閲者がメインで行いますが、株式会社ジー・ビーでは、自社開発したAIファクトチェックツールを補助的に活用しています。
社内のWeb開発者と編集チームが連携しながら、実務に合わせたツールの改善にも日々取り組んでいます。
もちろん、AIツールが提示する回答を、そのまま正しい事実として採用するわけではありません。
再確認が必要そうな箇所をAIツールがあたりをつけ、人間が信頼できる資料で確認するというイメージです。
監修者や校閲者の確認に加え、編集者とAIツールによるチェックを重ねることで、見落としを減らしていきます。
ダブルチェック・トリプルチェックは、同じ確認を繰り返すことではない
複数の人が原稿を読めば、それだけで精度が上がるとは限りません。
全員が同じ観点だけで確認していると、同じ見落としを繰り返す可能性があります。
それぞれの役割(重視するポイント)を分けることで、ダブルチェック・トリプルチェックの精度を高めることができます。
役割分担の例は、次の通りです。
監修者……専門領域の妥当性を確認する。
校閲者……固有名詞、数値、年代、出典、前後の矛盾を調べる。
編集者……原稿、資料、図版、監修・校閲の指摘を横断して確認する。
AIツール……再確認が必要そうな箇所を機械的に洗い出す。
このように、それぞれの確認範囲を明確にすることで、確認の抜け漏れを防ぐことができます。
まとめ|ファクトチェックの精度は、確認体制の設計で変わる
書籍や小冊子の事実確認では、一つの情報源や一人の確認者に頼らないことが大切です。
監修者は知名度だけでなく、専門性と役割を見て選ぶ
校閲者・校閲会社は、企画との分野的な相性と確認範囲を確かめる
回答を採用する道具ではなく、怪しい箇所を探し出す補助としてAIを使う
ファクトチェックは、最後に誤りを探すだけの工程ではありません。
誰に何を依頼し、どの資料を使い、どの段階で確認するかを、制作の初めから設計する仕事です。
複数の視点と資料を重ねることで、読者の「知りたい」に、より確かな情報で応えられます。
株式会社ジー・ビーでは、企画内容に応じた監修者・校閲者の選定から、参考資料の収集、原稿・図版の確認まで対応しています。
自社開発のAIツールも補助的に活用しながら、複数の確認工程を組み合わせて制作を進めます。
- この記事の監修者
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株式会社G.B.
雑誌・書籍・ムックの編集・出版を中心に、
その他にも広告媒体の企画・編集・制作著作権の管理・運用、翻訳、その他上記に付帯する一切の業務を行う。
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