書籍や冊子、Webコンテンツを制作するとき、「テーマは決まっているものの、企画の形にできない」「社内に編集経験がなく、構成から考えてほしい」と悩む担当者は少なくありません。
そこで頼りになるのが、編集プロダクションです。
読者設定、企画の切り口、タイトル、構成、取材、執筆、デザインなどを整理し、漠然としたアイデアを具体的な制作物へ変えていきます。
一方で、依頼時に「すべてお任せします」「いい感じにまとめてください」とだけ伝えると、期待していた企画と違うものが出てくることがあります。
問題なのは、発注側が持っている目的や事情まで共有せず、ただそのまま任せてしまうことです。
編集プロダクションへの上手な“丸投げ”とは、細かな答えをすべて用意することではありません。
判断に必要な材料を渡したうえで、企画の組み立てを委ねることです。
この記事では、書籍やムック、企業コンテンツの制作を手掛ける株式会社ジー・ビーの編集チームが、どこまで任せられるのか、何を共有すると提案の質が上がるのかを、実際の制作工程に沿って解説します。
記事の目次
「お任せします」だけでは、よい企画が生まれにくい
編集プロダクションは、企画を考えるための知識や経験を持っています。
しかし、依頼する企業や出版社の事情まで、最初から把握しているわけではありません。
株式会社ジー・ビーでも、「テーマは決まっているが企画の形にできない」「社内に素材はあるが、どう構成すればよいか分からない」といった段階から相談を受けています。
たとえば、「若い人に読まれる健康本をつくりたい」という依頼があったとします。
この一言だけでも、考えられる企画は数多くあります。
- 初めて健康を意識する20代向けの入門書
- 仕事が忙しい30代向けの生活改善本
- SNSで広がりやすい図解中心の書籍
- コンビニや書店で手に取りやすい低価格のムック
- 専門家の信頼性を前面に出した実用書
どれも「若い人向けの健康本」ですが、読者、価格、ページ数、販路、著者、デザインによって企画の形は大きく変わります。
情報が少ない状態では、編集プロダクション側も一般的な想定をもとに提案するしかありません。
その結果、「方向性が違う」「思っていたより堅い」「そこまで若者向けにしたくなかった」といった認識のずれが生じることがあります。
「いい感じ」という言葉にも、人によって思い浮かべるイメージは異なるものです。
発注担当者が考える「親しみやすいデザイン」と、編集者やデザイナーが考える「親しみやすいデザイン」が同じとは限りません。
参考書籍や既存媒体など、具体的な手がかりがあると、こういった認識のずれを減らせます。
完成形を細かく指示する必要はありませんが、企画段階で目指す方向と避けたい方向を共有することが大切です。
上手に丸投げするために、最低限伝えたい5つのこと
企画書や構成案を発注側でつくり込む必要はありません。
むしろ、内容を細かく決めすぎると、編集プロダクションが持つ企画力や提案力を生かしにくくなる場合があります。
ただし、次の5項目は、企画を考えるための土台として共有したい情報です。
制作する目的
まず伝えたいのは「なぜつくるのか」。
書店で販売して利益を上げたいのか、自社の認知度を高めたいのか、見込み客を獲得したいのか、既存顧客へ専門知識を届けたいのか。
目的によって、適した企画や媒体は変わります。
たとえば、企業の専門性を伝えることが目的なら、情報量の多い書籍が向いているかもしれません。
一方、問い合わせにつなげたい場合は、課題解決型のホワイトペーパーや小冊子が効果的なケースもあります。
想定している読者
年齢や性別だけでなく、読者が置かれている状況まで伝えると、企画の精度が上がります。
「40代の会社員」だけではなく、「健康診断の数値が気になり始めたものの、生活を大きく変える余裕がない40代の会社員」と整理すれば、必要な情報や言葉のレベルが見えやすくなります。
読者像が定まっていない場合は、その状態を率直に共有しても大丈夫です。
編集プロダクションと相談しながら、企画に適した読者を設定できます。
読者に届けたい価値
読後に、読者へどのような変化を与えたいのかを考えます。
「基本を理解してほしい」「自分の課題に気づいてほしい」「すぐ行動に移してほしい」「商品やサービスへの関心を高めたい」など、目指す読後感によって構成が変わります。
伝えたい情報を並べるだけでなく、読者が何を持ち帰る企画なのかを共有することが大切です。
決まっている条件
予算、ページ数、判型、刊行時期、販売方法、著者や監修者の有無など、すでに決まっている条件を伝えます。
特にスケジュールと予算は、企画の実現性を左右します。
取材を何件行えるか、撮影やイラストを入れられるか、専門家へ監修を依頼できるかも、条件によって変わります。
条件が未確定の場合は、「予算も含めて提案してほしい」と伝えるのもひとつの方法です。
避けたい方向
理想の完成形を説明するのが難しい場合は、「これは避けたい」という情報が役立ちます。
専門的すぎる内容にはしたくない、若者向けでも軽すぎる表現は避けたい、写真中心ではなく図解で見せたいなど、避けたい方向がわかると、編集プロダクション側も提案の範囲を絞りやすくなります。
これら5項目がそろえば、詳しい企画案がなくても、編集プロダクションは提案を始められます。
プロの引き出しを開ける依頼は「答え」より「課題」を渡す
編集プロダクションへ相談する際、発注側が完成形を決めすぎてしまうことがあります。
たとえば、「100ページの冊子をつくり、全10章で構成し、各章にインタビューを1本入れたい」と細かく指定するケースです。
その条件に沿った制作は進めやすくなります。
一方で、本当に100ページ必要なのか、インタビューが最適なのかを検討する余地は小さくなります。
編集プロダクションの提案力を引き出すには、「何を作るか」だけでなく、「何に困っているか」を伝えるのが効果的です。
- 自社サービスの特徴を紹介する、32ページの冊子を作ってください。
- 各サービスを4ページずつ紹介し、最後に会社概要を載せてください。
この依頼では、制作物の形がほぼ決まっています。
編集プロダクションは、指定された構成を整える役割が中心になります。
- 営業担当者がサービスの違いを説明するのに時間がかかっています。
- 商談前に読んでもらい、顧客自身が自社に合うサービスを判断できる資料をつくりたいです。
こちらは制作の目的と課題が明確です。
冊子だけでなく、比較表、導入事例、診断コンテンツ、Webページなど、複数の方法を検討できます。
編集プロダクションが持つ「引き出し」とは、単なるアイデアの数ではありません。
過去の制作経験をもとに、読者に適した切り口を選び、限られた予算やページ数のなかで、実現可能な形へ組み立てる力です。
発注側が抱える課題や事情が具体的であるほど、その経験を生かしやすくなります。
すでに制作物の仕様が決まっている案件では、指示型の依頼が適しています。
企画段階から相談したい場合は、課題共有型の伝え方が効果的です。
企画提案を受けたら「好み」ではなく「目的」で判断する
編集プロダクションから企画案が出てきた際、「自分の好みと合うか」だけで判断すると、企画のよし悪しを見誤ることがあります。
たとえば、担当者自身は文章をじっくり読むのが好きでも、想定読者が短時間で要点をつかみたい人であれば、図解や箇条書きを中心にした構成のほうが適しています。
企画案を見るときは、次の観点で確認します。
- 目的につながっているか
売上、認知、理解促進、問い合わせなど、制作目的に合った企画かを確認します。 - 読者に合っているか
内容の難易度、言葉遣い、情報量、デザインの方向が想定読者に適しているかを見ます。 - 他の企画との違いがあるか
競合書籍や既存コンテンツと比べ、選ばれる理由が伝わるかを確認します。 - スケジュールで実現できるか
取材、撮影、イラスト、監修などを含め、実際に制作可能な企画かを検討します。
企画に違和感がある場合も、「なんとなく違う」だけで終わらせず、理由を伝えることが重要です。
「情報量は十分ですが、初心者には少し難しく見えます」「信頼感はありますが、読者が行動するきっかけが弱いと感じます」と伝えれば、編集プロダクション側も修正の方向を判断しやすくなります。
企画提案は、一度で完成させるものとは限りません。
発注側が持つ業界知識と、編集プロダクションが持つ制作経験をすり合わせながら、精度を高めていく工程なのです。
編集プロダクションに任せやすい部分と、発注側で決めたい部分
企画をどこまで任せられるかは、案件によって変わります。
ただし、一般的には次のように役割を分けると進行が安定します。
発注側が企画書を完成させてから依頼する必要はありません。
自社の目的や制約、判断基準を共有し、企画の形へ落とし込む部分を編集プロダクションへ任せる方法があります。
反対に、自社の経営判断や商品戦略まで、外部の制作会社だけで決めることは難しいものです。
読者に何を届けたいのか、どの事業課題につなげたいのかは、発注側が中心となって判断します。
両者の役割を分けることで、単なる作業の外注ではなく、企画を一緒に育てる関係をつくれます。
まとめ|上手な丸投げは、判断材料を渡して企画を任せること
編集プロダクションへ企画を丸ごと任せること自体は、悪い依頼方法ではありません。
重要なのは、すべてを説明せずに「お任せ」とするのではなく、企画を判断するための材料を共有することです。
- 制作目的を伝える
- 読者と読後の変化を考える
- 予算や納期などの条件を早めに示す
- 完成形より、解決したい課題を伝える
- 企画案は目的と読者を基準に判断する
発注側が答えをすべて用意する必要はありません。
目的、読者、条件、課題を渡し、最適な形を考える工程を任せる。
それが、編集プロダクションの経験と企画力を生かす“上手な丸投げ”です。
企画段階からの書籍・冊子制作についてご相談ください
株式会社ジー・ビーでは、「テーマしか決まっていない」「社内に素材はあるものの、企画の形にできない」「読者設定や構成から相談したい」といった段階から対応しています。
制作の目的や想定読者、予算、スケジュールを伺い、企画の切り口、タイトル、構成、取材方法、誌面の見せ方まで一緒に整理します。
- この記事の監修者
-
株式会社G.B.
雑誌・書籍・ムックの編集・出版を中心に、
その他にも広告媒体の企画・編集・制作著作権の管理・運用、翻訳、その他上記に付帯する一切の業務を行う。
- [ SNSで記事をシェアする ]