同じ編集プロダクションへ依頼しているのに、担当者によって原稿やデザインの品質が違う。
経験豊富な編集者の案件は安心できる一方、別の担当者になると細かな抜けが目立つ――。
制作物の品質が個人の力量に左右されると、発注する側は毎回、担当者の経験値まで見極めなければなりません。
編集は、正解が一つではない仕事です。
そのため、個人の判断の差を完全になくすことはできません。
しかし、経験者が何を見て、どこで立ち止まり、何を確認しているのかを共有することはできます。
この記事では、株式会社ジー・ビーがすべての案件で活用している品質管理の仕組みを例に、属人化を防ぐ考え方と、ミスや品質のバラつきが少ない編集プロダクションを見分けるポイントを紹介します。
記事の目次
品質が安定する会社は、「ベテランの基準」を共有している
編集プロダクションを選ぶとき、担当者の経歴や制作実績は重要な判断材料です。
書籍やムック、雑誌、広告などの制作経験が豊富な編集者は、原稿や誌面を見たときに、問題になりそうな箇所を早く見つけられます。
たとえば、次のような点です。
- 企画の狙いと原稿の内容がずれていないか
- 想定読者に対して説明が難しすぎないか/やさしすぎないか
- 見出しと本文の内容が合っているか
- 想定読者が求めるコンテンツ/見せ方になっているか
- ページごとの情報量に偏りがないか
こうした確認には、確かに経験が生きます。
ただし、ベテランが在籍しているだけで、会社全体の品質が安定するとは限りません。
その人が担当した案件だけ品質が高く、別の担当者になると確認項目が変わる。
経験者が忙しい時期には、相談や確認の時間を取れない。
これでは、品質が個人の稼働状況に左右されます。
そこで、本当に見るべきなのは、優秀なベテランスタッフが在籍しているかどうかだけではありません。
そのスタッフが持つ知識や判断基準を、組織として共有できているか。
ここに、属人化しやすい会社と、品質を安定させやすい会社の違いがあります。
編集の属人化は、担当者の力量不足だけで起きるのではない
属人化というと、「一部の人だけ仕事のクオリティが高い状態」を想像しがちです。
書籍編集の現場では、それに加えて「品質確認の基準が担当者によってまちまち状態」も属人化に当たります。
たとえば、ある編集者は本文の読みやすさを丁寧に確認します。
しかし、写真やイラストといったビジュアルの見やすさやバランスにまでは細かい意識を向けていないかもしれません。
別の編集者は、内容の信頼性を守ることに注力する一方、ページ全体の情報量や余白の使い方にはあまり注意を向けないことがあります。
どの編集者も「能力不足」とは言いきれません。
人によって経験してきたジャンルや、得意とする工程が違うためです。
ただし問題は、その違いを組織が把握せず、担当者一人の判断だけに頼ってしまうことです。
編集者の個性や得意分野は、制作物の魅力につながります。
そのため、なくすべきなのは個性ではなく、「確認すべき基本事項を個人任せにする体制」なのです。
ベテランが最後に直すだけでは、組織力が上がらない
株式会社ジー・ビーでも、かつては20年以上のキャリアを持つスタッフが、スタッフの制作物を1つずつ確認する体制を取っていました。
経験豊富なスタッフが最終チェックをすれば、現場が気づかなかった問題を拾うことができ、完成物の品質を守るうえでは有効な方法です。
ただし、この体制には2つの課題がありました。
1つは、確認作業が特定の人へ集中することです。
案件が増えるほど、ベテランスタッフの負担は重くなります。
確認待ちによって、制作の進行が止まる可能性も出てきます。
もう1つは、担当者自身に確認の目が育ちにくいことです。
経験者が問題を発見し、正しい形へ直してしまえば、その案件は完成します。
しかし、担当者が、
「なぜここが問題だったのか」
「次回はどの段階で気づくべきだったのか」
「どんな観点でチェックすれば、この問題を見つけられるのか」
まで理解しなければ、同じ種類のミスが繰り返されます。
「ベテランスタッフが最後には直してくれる」という安心感が、担当者自身の責任感を弱める可能性もあるでしょう。
必要だったのは、ベテランがすべての案件の責任を負う体制ではありません。
ベテランがどんな視点で品質チェックをしているのかを言語化し、担当者自身が自分の目で確認できる体制でした。
ベテランの目を共有する「品質管理シート」
株式会社ジー・ビーでは、経験豊富なスタッフが培ってきた制作ノウハウを言語化して整理し、「品質管理シート」として全スタッフが全案件で使用しています。
これは、作業が終わったかどうかを確認するだけの進行表ではありません。
企画の根本から、構成、誌面デザイン、カバー、事故防止まで、制作の各段階で立ち止まって確認するためのシートです。
制作の最初には、まず本の前提を整理します。
- どのような内容の本か
- 読後に読者がどう変わるのか
- どのような見せ方で伝えるのか
- クライアントが特に優先している点は何か
この部分が曖昧なままでは、文章やデザインの良し悪しも判断できません。
文章そのものが読みやすくても、読者が求める内容から外れていれば、書籍としての品質が高いとはいえないからです。
制作が進むと、構成や誌面について確認します。
- 巻頭のコンテンツが、読者を引きつける内容になっているか
- 見出しが、読む動機を生む内容になっているか
- 本文と図版が同じ説明を繰り返していないか
- 情報量が過密、または不足していないか
- 前後のページで役割が重複していないか
カバーのデザインにおいては、タイトルの視認性、情報の優先順位、帯の役割、写真やイラストの効果など、本文とは異なる観点が必要なため、項目が独立しています。
そして制作の最終盤に行う最終チェックは、ベテランスタッフの経験をもとに、事故を防ぐために必要なチェック項目が並びます。
一冊を最初から最後まで漫然と読んでチェックするのではなく、ページ番号だけ、目次と本文だけ、アイコンだけ、などと要素ごとに全ページを確認します。
見る対象を絞ることで、全体を読んだときには見逃しやすい不整合を拾いやすくするためです。
ミスが少ないプロダクションを見分ける5つの質問
制作物を何点か見ただけで、そのプロダクションの品質管理体制まで判断するのは難しいものです。
発注前の打ち合わせでは、次のような点を確認すると、ミスや品質のバラつきを防ぐ仕組みが整っているかどうかが見えやすくなります。
社内共通の品質管理基準がありますか
確認項目が担当者個人の経験に任されているのか、全社で共有された基準があるのかを聞きます。
チェックシートがあるかどうかだけでなく、どの工程で、誰が使うのかまで確認すると実態が分かります。
企画意図を制作チームでどう共有しますか
品質管理は、誤字脱字の確認だけではありません。
想定読者、読後の変化、見せ方、発注者が重視する点を、ライターやデザイナーまで共有しているかを確認します。
担当者が迷ったとき、誰かに相談できますか
すべての編集者が、あらゆるジャンルに詳しいわけではありません。
重要なのは、分からないことを一人で抱えず、経験者や専門家へ相談できる環境が整っていることです。
校了前には、どのような確認をしますか
全体を通読するだけでなく、目次、ページ番号、奥付、URL、QRコード、図版などを個別に確認する工程があるかを聞きます。
最終段階での事故防止策が具体的に説明できる会社は、確認の勘所を組織で共有できている可能性が高いといえます。
ミスや課題を、次の案件へどう反映しますか
ミスを担当者個人の注意不足として終わらせるだけでは、再発を防げません。
品質基準やチェック項目、制作マニュアルへと反映する仕組みがあるかを確認します。
ミスが少ない会社は、「経験豊富なスタッフがいます」と説明するだけではありません。
その経験を組織の仕組みに落とし込む方法まで説明できます。
まとめ|属人化を防ぐとは、経験者の判断を組織へ残すこと
編集の品質には、担当者の経験や感性が大きく関わります。
だからこそ、基本的な確認まで一人の記憶や注意力へ任せない仕組みが必要です。
経験豊富なスタッフが「何を見ているのか」を言語化する
案件固有の判断は、経験者へ相談できる体制で補う
ミスや学びを、会社全体の資産として制作体制に活かす
属人化を防ぐことは、編集者の個性をなくすことではありません。
読者を引きつける見出しや、著者らしさを生かす原稿、企画に合った誌面設計には、担当者の判断が欠かせません。
その判断を生かすためにも、抜けてはいけない基本を仕組みで支える。
それが、ミスや品質のバラつきが少ない編集プロダクションの条件です。
株式会社ジー・ビーでは、経験豊富なスタッフの制作ノウハウを品質管理シートへ整理し、企画、編集、デザイン、校正、校了まで全案件で活用しています。
担当者個人の経験だけに頼らず、社内で相談・確認しながら書籍やムックを制作します。
- この記事の監修者
-
株式会社G.B.
雑誌・書籍・ムックの編集・出版を中心に、
その他にも広告媒体の企画・編集・制作著作権の管理・運用、翻訳、その他上記に付帯する一切の業務を行う。
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