目次を見れば売れるかどうかがわかる!書籍の骨組みを強固にする編集者のテクニック

タイトルや帯に引かれて本を手に取っても、目次を見た瞬間に戻してしまうことがあります。
目次は、本文を書き終えたあとに見出しを並べるものではありません。
何を入口にし、どの順番で理解を進め、最後に何を持ち帰ってもらうか。
その本の構成は、目次の段階でほぼ決まっています。

「目次は、原稿がそろってから整えればよい」

書籍企画の相談で、そう考えられていることがあります。

著者が書きたい内容を章ごとに分け、似た話を近くへ置き、最後に見出しを短く整える。
たしかに、それでも目次の形にはなります。

けれど、その段階で目次をつくると、すでにある情報を整理することが中心になります。

読者は、まだ本文を読んでいません。

タイトルや帯で興味を持ったあと、目次を見て、この本を読むかどうかを判断します。

自分の悩みが入っているか。

知りたい答えがありそうか。

難しすぎず、最後まで読めそうか。

似た本では触れていない切り口があるか。

つまり目次は、読み始めた読者を案内する地図である前に、読者を本の中へ招き入れる入口です。

そして、目次はそのまま本全体の構成でもあります。

何を最初に置くか。
何を後ろへ回すか。
どの章で理解を深め、どの章で選択肢を比べ、最後に何を判断できるようにするか。

この順番を決めずに本文を書き始めると、情報は増えても、本の役割は見えにくくなります。

G.B.では、書籍企画を検討するとき、目次を「章タイトルの一覧」ではなく、読者が本へ入り、最後まで進むための設計図として見ます。

目次を見れば、売れるかどうかを完全に予測できるわけではありません。

けれど、誰に何を届ける本なのか、読者がどこで興味を持ち、どこで迷い、どこへ着地するのかは、目次の段階でかなり見えます。

目次は、読みたくなる入口であり、読者を最後まで運ぶ構成そのものなのです。

目次は、見出しの一覧ではなく本全体の構成である

目次という言葉から、章タイトルと項目名を並べたページを思い浮かべる人は多いでしょう。

しかし、編集者が企画段階で考える目次は、完成本に掲載する一覧ページだけではありません。

その本で扱う問いを選び、順番を決め、各章の役割を分ける作業です。

たとえば、お金の本をつくるとします。

税金、投資、保険、住宅ローン、老後資金、相続。

関連する情報を並べれば、一見すると網羅的な目次になります。

けれど、読者が「結局、自分は何から考えればよいのか」を判断できなければ、その本は辞書に近づきます。

構成を考えるときは、情報の種類より先に、読者の動きを考えます。

まず、自分のお金がどこへ消えているのかに気づく。

次に、毎月変えられる支出と、すぐには変えられない支出を分ける。

そのあとで、保険、投資、住宅ローンを比べる。

最後に、自分が何を先に見直すかを決める。

同じ情報を扱っていても、この順番があれば、読者は本の中で一つの判断を進められます。

目次は、著者が知っていることを分類するものではありません。

読者が知らない状態から、理解し、比べ、決められる状態へ移るための構成です。

目次をつくることは、本文の入れ物を決めることではありません。

本全体で、読者にどんな変化を起こすかを決めることです。

図1 情報の一覧としての目次と、読者の変化を設計した目次
情報を分類して並べる目次と、入口から読後の変化までを設計する目次の比較図

本は、本文より先に目次で読まれている

読者は、最初から本文を順番に読むとは限りません。

書店では、タイトルと表紙を見て手に取り、帯や前書きを確認し、目次を開きます。

オンラインストアでも、商品説明や試し読みの中で目次を見ます。
出版社の企画会議や書店営業、法人提案でも、内容を短時間で説明するときに目次が使われます。

目次は、本の中身を最短時間で判断する場所です。

ここで読者が見ているのは、情報量だけではありません。

自分の悩みが言葉になっているか。

知らなかった視点がありそうか。

読み進めるほど答えに近づけそうか。

似た本との違いが分かるか。

たとえば、「マーケティングの基礎」「顧客分析」「商品開発」「販売促進」という目次は、内容として間違っていません。

ただし、読者が経営者や商品担当者であれば、知りたいのは用語の分類ではないかもしれません。

なぜ、よい商品なのに売れないのか。

顧客は、どこで買わないと決めているのか。

値下げする前に、何を見直すべきか。

リピートされる商品は、最初の一回で何を約束しているのか。

問いの形で見せると、読者は自分の場面と結びつけやすくなります。

「この本には、自分が今困っていることが書かれている」と思えるからです。

もちろん、すべての見出しを疑問形にすればよいわけではありません。

大切なのは、章タイトルを見ただけで、読む理由が立ち上がることです。

目次は、本文を要約するためのページではありません。

本文までたどり着いてもらうための、最初の編集です。

図2 説明する目次と、読みたくなる目次
内容を説明するだけの見出しと、読者の場面や問いから続きを読みたくさせる見出しの比較

読みたくなる入口をつくる5つの条件

目次を入口として強くするには、刺激の強い言葉を並べればよいわけではありません。

章タイトルだけが面白くても、本文の内容と結びついていなければ、読者の期待は裏切られます。

読みたくなる目次には、次の五つの条件があります。

読者が、自分の場面を見つけられる

「心理学の基本理論」では、誰のどんな悩みに役立つのかが見えません。

「なぜ、断りたいのに断れないのか」とすれば、人間関係で迷っている読者が自分を重ねられます。

入口で必要なのは、対象読者の属性を説明することではありません。

読者が今いる場面を、見出しの中に置くことです。

答えを知りたくなる問いがある

目次には、本文を読まなければ答えが分からない余白が必要です。

「睡眠の重要性」より、「長く寝ても疲れが取れないのはなぜか」の方が、続きを読みたくなります。

問いは、煽るために置くのではありません。

読者が曖昧に感じていた違和感を、読める形にするために置きます。

読んだあとに得られるものが見える

「住宅ローンの種類」だけでは、知識が増えることしか分かりません。

「返せる金額ではなく、暮らせる予算を決める」とすれば、読後に何を判断できるかが見えます。

見出しには、扱うテーマだけでなく、読者が持ち帰れる判断を入れます。

その本ならではの切り口がある

同じテーマの本が並ぶ売り場では、目次が似て見えることがあります。

歴史の本なら、時代順に並べる。
健康本なら、症状別に並べる。
採用本なら、募集、面接、定着の順に並べる。

定番の順番が必要な場合もあります。

けれど、すべてが定番どおりなら、その本を選ぶ理由は弱くなります。

「失敗する直前」「決める直前」「話が食い違う瞬間」など、その本ならではの観察点を入れます。

読む負担より、得られるものが先に伝わる

専門用語や抽象語が続く目次は、内容が充実していても難しそうに見えます。

読者は、必要な情報があるかだけでなく、自分に読めるかも判断しています。

見出しの長さ、言葉の難易度、項目数、章のまとまりを見直し、「これなら読めそうだ」と思える入口にします。

入口として強い目次は、読者の悩みを見つけ、答えへの期待をつくり、読後の変化まで想像させます。

図3 読みたくなる目次の5つの条件
読者の場面、問い、読後価値、独自の切り口、読む負担の低さという5条件

入口のあと、読者を最後まで運ぶ順番

目次で興味を持ってもらえても、章の順番が弱ければ、読者は途中で迷います。

入口の次に必要なのは、読者を最後まで運ぶ構成です。

よくあるのは、著者が説明しやすい順番と、読者が理解しやすい順番が一致していないケースです。

専門家は、定義や歴史、制度の全体像から説明したくなります。

しかし読者は、まず「自分に何が起きているのか」を知りたいことがあります。

たとえば、中小企業の採用を扱う本で、最初に労働市場の変化を長く説明するとします。

情報としては重要です。

けれど、採用担当者が困っているのは、応募が来ない、面接で辞退される、入社後に辞めるという目の前の問題です。

そこで、最初に失敗の場面を置き、その後で市場や制度を原因として説明すれば、背景情報を読む理由が生まれます。

章の順番は、次のような流れで考えられます。

問題に気づく。

なぜ起きるのかを理解する。

よくある誤解や失敗を外す。

選択肢を比べる。

自分の場合を判断する。

具体的な行動へ移る。

すべての本が、この順番に当てはまるわけではありません。

ただし、各章の役割を動詞で説明できるかは確認できます。

知る章。
気づく章。
疑う章。
比べる章。
決める章。
動く章。

章の役割が同じ動詞に偏っている場合、その本は説明が続きすぎている可能性があります。

すべての章が「知る」だけなら、情報量は増えても、読者は判断へ進めません。

目次は、読む順番を示すだけではありません。

前の章を読んだから、次の章を読みたくなる関係をつくるものです。

図4 読者を最後まで運ぶ章の流れ
入口、前提整理、具体例、判断、行動へと読者を段階的に進める構成

モデル事例:情報の一覧を、読みたくなる構成へ変える

ここでは、マーケティング入門書を想定したモデル事例を紹介します。

最初の構成案には、次のような章が並んでいました。

市場分析 顧客理解 商品開発

価格戦略 販売促進 効果測定

マーケティングを学ぶ本として、扱う内容に大きな不足はありません。
体系的で、専門分野の分類としても自然です。
けれど、目次だけを見た読者は、この本が自分のどの悩みに答えてくれるのかを、すぐには判断できません。

市場分析を学べば、いま売れない理由が分かるのか。

顧客理解を深めれば、商品を変えるべきか、伝え方を変えるべきか決められるのか。

価格戦略の章を読めば、値下げ以外の選択肢が見つかるのか。

見出しは正しくても、読む理由がまだ立ち上がっていません。

そこで、専門分野の名前を並べるのではなく、読者が仕事の中でぶつかる問いから構成を組み直しました。

第1章 よい商品なのに、なぜ売れないのか

第2章 顧客は、どこで「買わない」と決めるのか

第3章 売りたいことと、知りたいことはなぜずれるのか

第4章 値下げする前に、何を見直すべきか

第5章 売れた理由を、次の商品へどう残すか

この構成なら、読者は目次を見た段階で、

「自社の商品にも起きている」

「知りたかったのは、このことだ」

「この順番なら、原因を整理できそうだ」

と感じやすくなります。

もちろん、市場分析や顧客理解を削ったわけではありません。

第1章では、市場や競合を見ながら、商品が置かれている状況を確認します。

第2章では、顧客の比較や離脱の場面を分析します。

第3章では、企業が伝えたい価値と、顧客が判断に使う情報のずれを整理します。

第4章では、価格、見せ方、売り場、導線を比べます。

第5章では、販売結果を次の商品企画や販促へ残す方法を扱います。

中身は同じでも、入口と順番が変わっています。

変更前の目次は、マーケティングの知識を分類したものでした。

変更後の目次は、売れない理由に気づき、顧客の判断を理解し、改善点を比べ、次の打ち手を決める流れになっています。

ここで編集者が行ったのは、章タイトルを目立たせることではありません。

各章の役割を、読者の変化に合わせて組み直すことです。

最初の章で、自社の商品が売れない理由を考える入口をつくる。

次の章で、顧客が離れる場面を見る。

そのあとで、伝え方や価格を見直す。

最後に、一度の改善で終わらせず、売れた理由を次の商品へ残す。

前の章を読んだから、次の章を読む理由が生まれています。

目次を見た段階で、本の中をどう進むのかも想像できます。

目次を組み直すとは、情報を減らすことではありません。
読者が知りたい順番へ、情報の役割を変えること
なのです。

図5 情報を並べた目次から、読者の判断を助ける目次へ
情報項目中心の目次を、読者の問いと判断の順番に沿う目次へ組み替える例

編集者は、目次のどこを削り、どこを前へ出すのか

構成を強くする作業では、見出しを足すことより、役割を整理することの方が多くあります。

情報を増やせば、本は充実して見えます。

けれど、似た内容が複数の章に出てくると、読者は何が進んだのか分からなくなります。

編集者は、目次を見ながら次の点を確認します。

同じ話を、別の言葉で繰り返していないか

「会社の魅力を伝える」「自社らしさを言葉にする」「他社との違いを出す」が別章に置かれていても、本文では同じ話になることがあります。

その場合は、一つの章へまとめるか、役割を「発見」「言語化」「伝達」に分けます。

前提説明が、入口をふさいでいないか

正確に説明するために、歴史や制度から始める構成があります。

ただし、その説明が長いと、読者が自分の問題へたどり着く前に離れます。

必要な前提は残しながら、困っている場面を先に置けないかを考えます。

一番強い問いが、後ろへ埋もれていないか

著者にとって当たり前の話ほど、後半へ置かれることがあります。

しかし、読者にとって新しい切り口なら、入口へ出した方がよい場合があります。

「この本だから読んでみたい」と思える問いを、序章や第1章に置けるか確認します。

章の大きさがそろいすぎていないか

すべての章を同じページ数、同じ項目数にそろえると、整って見えます。

けれど、読者にとって重要な章まで短くなり、補足的な章が不自然に膨らむことがあります。

章ごとの役割に応じて、情報量に強弱をつけます。

最後が、精神論やまとめ直しで終わっていないか

終章で、本文の内容を言い換えて励ますだけになることがあります。

読者が最後に何を決めるのか。
何を持ち帰るのか。
明日から何を確認するのか。

読後の行動まで設計すると、終章が本の着地点になります。

削るのは、情報そのものではありません。

読者の進行を止める重複と、読む理由を弱くする順番です。

実務に落とす最小セット

目次を細かくつくり込む前に、まず次の8項目を書いてみてください。

この本を開く直前、読者に何が起きているか

検索、相談、失敗、違和感など、読者が情報を探し始める場面を書きます。

例:会社は黒字なのに、通帳の残高が増えず、何を見直せばよいか分からない。

目次を見た読者に、最初に何を思ってほしいか

「自分の話だ」「知らなかった」「これなら読めそうだ」など、入口で起こしたい反応を決めます。

この本で扱う、一番大きな問いは何か

テーマ名ではなく、読者が最後まで答えを探す問いを書きます。

例:利益が出ている会社に、なぜ現金が残らないのか。

読者は、最後に何を判断できるようになるか

知識を得ることではなく、比較、選択、行動として書きます。

各章の役割を、動詞で言えるか

気づく、理解する、疑う、比べる、決める、動くなど、章ごとの役割を一語で置きます。

同じ役割の章が重複していないか

似た内容が別章に分かれていないか、同じ結論が繰り返されていないかを確認します。

目次だけで、その本らしい切り口が見えるか

他の本へ置き換えても成立する見出しばかりになっていないかを確認します。

最後の章で、読者はどこへ着地するか

理解で終わるのか、選ぶのか、計画を立てるのか。
読後の出口を具体化します。

最後に、目次を次の一文へまとめます。

[どんな場面にいる読者]を入口に、

[どんな問い]を、[どんな順番]で解き、

最後に[何を判断・実行]できるようにする本か。

この一文と目次が一致していれば、本の骨組みはかなり強くなります。

図6 目次設計シート
読者の直前の場面、最初の問い、各章の役割、最後の判断を整理するシート

まとめ

目次は、本文を書き終えたあとに見出しを並べるページではありません。

その本で何を扱い、どこから読者を迎え、どの順番で理解を進め、最後に何を持ち帰ってもらうか。

目次は、本全体の構成そのものです。

そして、読者は本文より先に目次を見ます。

そこに自分の問題があるか。
答えを知りたい問いがあるか。
自分にも読めそうか。
似た本と何が違うのか。

目次は、本文へ入るかどうかを決める入口でもあります。

目次を考えるときは、次の順番で確認します。

  • 読者が本を探し始める場面を、入口に置く。
  • 情報の分類ではなく、読者が理解し、比べ、決める順番をつくる。
  • 各章の役割を動詞で分け、重複をなくす。
  • その本だから読みたいと思える問いを、前へ出す。
  • 最後に、読者が何を判断・実行できるかを決める。

強い目次は、内容を立派に見せるためのものではありません。

読者が「これは自分の本だ」と感じ、本文へ入り、途中で迷わず、最後に一つの判断へたどり着くためのものです。

目次を見れば、売れるかどうかのすべてが分かるわけではありません。

けれど、読者が読む理由と、本が果たす役割が見えない目次は、本文をどれだけ増やしても強くなりません。

本の骨組みを強くするには、原稿を書く前に、入口と出口を目次でつなぐ。

そこから、書籍企画は動き始めます。

制作について相談する

この記事の監修者
株式会社G.B.

株式会社G.B.

雑誌・書籍・ムックの編集・出版を中心に、
その他にも広告媒体の企画・編集・制作著作権の管理・運用、翻訳、その他上記に付帯する一切の業務を行う。

[ SNSで記事をシェアする ]