企画の方向性は決まっていても、「本当に読者が求めている内容なのか」「どのように打ち出せば手に取ってもらえるのか」と迷うことがあります。
特に、SNSで生まれた流行や新しい生活習慣を扱う企画では、話題性だけを頼りに制作を進めるのは危険です。
必要なのは、誰が何に反応しているのかを調べ、その背景にあるニーズを書籍の構成へ落とし込むことです。
この記事では、編集プロダクションがおこなう市場リサーチとトレンド分析の考え方を、SNSで注目されたレシピの書籍化事例を交えて紹介します。
記事の目次
市場リサーチは「流行しているものを探す作業」ではない
市場リサーチと聞くと、売れている本やSNSで話題の投稿を集める作業を思い浮かべるかもしれません。
もちろん、既刊書やSNSの動向を確認することは重要です。
ただし、情報を集めるだけでは、書籍の企画や構成を決める材料として十分とはいえません。
市場リサーチの目的は、表面的な流行の奥にある読者の関心を見つけることです。
たとえば、あるレシピがSNSで多く共有されていたとします。
単に「この料理が流行している」と捉えるだけでは、似たようなレシピを集めた企画になりがちです。
そこで、次のような点まで掘り下げます。
- どのような人が投稿を見ているのか
- レシピのどの部分が評価されているのか
- 手軽さ、見た目、節約、健康など、何が支持の理由なのか
- 読者はレシピを見たあと、どのように活用しているのか
- 書籍にすることで、どのような価値を加えられるのか
同じレシピでも、支持される理由によって書籍の打ち出し方は変わります。
短時間で作れる点が評価されているなら、時短を軸にした構成が考えられます。
見た目の楽しさが注目されているのであれば、写真や誌面デザインの比重を高める必要があります。
市場リサーチでは、人気の有無だけでなく、「なぜ人気なのか」を確かめることが重要です。
売れる可能性を高めるために確認したい4つの視点
市場の状況を調べる際は、情報量を増やすこと自体を目的にしないよう注意が必要です。
調査結果を企画に生かすには、確認する視点をあらかじめ整理しておきます。
誰が読む本なのか
最初に考えるべきなのは、想定する読者です。
年齢や性別だけでなく、どのような場面で本を手に取り、何を解決したいのかまで具体化します。
たとえば、同じ料理本でも、毎日の献立に困っている人と、SNSへ投稿する料理を探している人では、必要な情報が異なります。
前者には材料の入手しやすさや調理時間が重要です。
後者には見た目の工夫や撮影方法も役立つかもしれません。
読者像が曖昧なままでは、構成や誌面の方向性も定まりません。
何が支持されているのか
次に、テーマそのものではなく、読者が反応している要素を確認します。
「レシピが人気」「片づけが話題」といった大きなくくりだけでは不十分です。
簡単だから支持されているのか、意外性があるのか、従来の悩みを別の方法で解決しているのかを見ていきます。
読者の反応を細かく分析することで、企画の中心に置くべき要素が見えます。
既刊書と何が違うのか
注目されているテーマには、すでに多くの関連書が刊行されていることがあります。
そのため、既刊書のタイトル、構成、著者、読者層、誌面の見せ方などを確認し、新しい企画として成立する余地があるかを考えます。
既刊書と内容が似ていても、読者の設定や情報のまとめ方を変えることで、新しい企画になる可能性はあります。
重要なのは、無理に奇抜なテーマを探すことではありません。
既存の本では十分に応えられていない読者の疑問や使い方を見つけることです。
書籍としてどのように見せるのか
SNSで支持された情報が、そのまま書籍でも読まれるとは限りません。
SNSは短時間で内容が伝わる一方、書籍では複数の情報を順序立てて読むことができます。
投稿を並べるだけではなく、読者が理解しやすく、繰り返し使いやすい構成に再設計しなければなりません。
どの情報を入口にするのか。
どの順番で紹介するのか。
写真や図解をどこに配置するのか。
市場リサーチの結果は、テーマの選定だけでなく、構成や誌面設計にも反映させます。
トレンド分析では「誰が、なぜ反応したか」を見る
トレンドは、単に検索数や投稿数が増えている状態を指すものではありません。
数字が伸びている背景には、生活環境や価値観の変化があります。
その変化を読み取らなければ、企画を立てた時点では話題でも、刊行時には読者の関心から外れてしまうおそれがあります。
SNSを調査する場合も、投稿数だけを見るのではなく、投稿へのコメントや反応の内容を確認します。
「作ってみたい」という反応が多いのか。
「材料が少なくて助かる」「子どもが喜びそう」といった具体的な声があるのか。
支持されている理由を分類すると、読者が求める価値が見えやすくなります。
ターゲット層に近い人へのヒアリングも有効です。
調査担当者が集めた情報だけでは、投稿を見る人の細かな感覚までは把握できない場合があります。
実際にそのテーマへ関心を持つ人へ話を聞くことで、データだけでは分からない疑問や不満を確認できます。
大切なのは、SNS上の盛り上がりをそのまま評価しないことです。
一時的な話題なのか、生活の中へ定着しつつある変化なのか。
書籍としてまとめたときに、読者が保存し、繰り返し参照する価値があるのか。
複数の情報を組み合わせて判断します。
SNSで流行したレシピを書籍化した事例
ある案件では、SNSで流行しているレシピを集め、1冊の本にまとめたいという依頼がありました。
複数のインフルエンサーからレシピを提供してもらう計画でしたが、人気の投稿を集めるだけでは、書籍全体の軸が定まりません。
誰のどのようなレシピが注目されているのか。
どの部分が、どのような人に支持されているのか。
誌面では、何を前面に出せば想定読者へ伝わるのか。
こうした点を確認するため、独自のノウハウを持つリサーチ担当者が調査と分析を進めました。
さらに、人脈を生かしてターゲット層に近い人へヒアリングをおこない、市場リサーチとトレンド分析の精度を高めました。
調査結果は、掲載するレシピを選ぶためだけに使ったわけではありません。
読者がどのような順番で情報を見たいのか、何を基準にレシピを探すのかを整理し、構成案として提案しました。
そのうえで、複数のインフルエンサーが持つレシピを一冊の流れにまとめています。
この案件で重視したのは、制作を始める前に読者のニーズをできる限り具体化することでした。
リサーチの精度が低ければ、実際に本を購入する人が何を求めているのか分からないまま制作が進みます。
その結果、情報量は多くても、読者が知りたいことへ十分に答えられない誌面になる可能性があります。
調査、分析、構成設計を切り離さずに進めることで、集めた情報を書籍の形へ落とし込みやすくなります。
市場リサーチを依頼する編集プロダクションの選び方
「市場リサーチに対応している」と掲げる編集プロダクションでも、実際の調査範囲や進め方は異なります。
依頼前には、次の点を確認するとよいでしょう。
調査結果を構成へ反映できるか
情報を一覧にして提出するだけでなく、調査結果から企画や構成を提案できるかを確認します。
出版社の編集者が求めているのは、資料の量ではありません。
読者ニーズを踏まえ、どのような本にすべきかを判断するための材料です。
調査する人と編集する人が連携しているか
リサーチ担当者と編集担当者の連携も重要です。
調査結果が編集工程へ十分に共有されなければ、せっかく見つけた読者の反応や市場の特徴が、誌面に反映されない可能性があります。
誰が調査し、誰が分析し、誰が構成を決めるのか。
役割と情報共有の方法を確認しておきます。
ターゲット層へのヒアリングができるか
ネット上の情報だけでなく、必要に応じて読者に近い人へ話を聞ける体制があるかも判断材料になります。
すべての案件でヒアリングが必要とは限りません。
しかし、新しいテーマやSNS発の企画では、実際の読者の感覚が構成を左右することがあります。
専門家や制作者のネットワークがあるか
企画によっては、リサーチだけでなく、著者、監修者、インフルエンサー、ライターなどの協力が必要です。
市場の状況を踏まえて必要な人材を見極め、候補者へ依頼できるネットワークがあれば、調査後の制作も進めやすくなります。
依頼時には、「何人の専門家とつながっているか」だけでなく、「企画に応じて誰に何を依頼するかを判断できるか」を確認することが大切です。
まとめ|市場リサーチの結果を本の構成へつなげる
売れる可能性のあるテーマを見つけるには、話題になっているものを集めるだけでは足りません。
ポイントは次の3つです。
- 流行の有無ではなく、誰がなぜ反応しているのかを調べる
- 読者のニーズ、既刊書との差、誌面での見せ方を整理する
- 調査結果を企画、構成、制作体制へ一貫して反映する
市場リサーチとトレンド分析は、売れ行きを保証するものではありません。
しかし、読者が何を求めているのかを確認しないまま制作を進めるリスクは減らせます。
株式会社ジー・ビーでは、テーマに応じた市場リサーチやトレンド分析をおこない、調査結果を企画や構成へ反映した書籍制作を支援しています。
SNS発の企画や、読者ニーズの捉え方に迷っている企画についても、制作内容や必要な体制を整理したうえでご提案します。
- この記事の監修者
-
株式会社G.B.
雑誌・書籍・ムックの編集・出版を中心に、
その他にも広告媒体の企画・編集・制作著作権の管理・運用、翻訳、その他上記に付帯する一切の業務を行う。
- [ SNSで記事をシェアする ]