「図解を使った本をつくりたい」「自分の経験を本にまとめたい」。
そう考えていても、読者や構成、見せ方まで明確に決まっている人は多くありません。
頭の中には伝えたいことがあるのに、企画書にしようとすると言葉が止まってしまう。
自費出版を検討する方からは、こうした相談がよく寄せられます。
企画の入口は、漠然としたアイデアでも問題ありません。
ただし、そのまま制作を始めると、内容を盛り込みすぎたり、誰のための本なのかが曖昧になったりします。
この記事では、「図解本をつくりたい」という相談を例に、アイデアを読者に届く企画へ整える流れを紹介します。
相談を受ける技術営業と編集者が、どこを見て、何を決めているのか。
株式会社ジー・ビーの制作現場をもとに解説します。
記事の目次
「図解本をつくりたい」は、まだ企画の入口にすぎない
相談者自身は、「図解本」という形式まで決まっているため、すでに企画が固まっているように感じるかもしれません。
しかし、図解は企画そのものではありません。
情報を伝えるための表現方法です。
本の企画として成立させるには、少なくとも次の点を整理する必要があります。
- 誰に読んでもらいたいのか
- 読者が現在どの程度の知識を持っているのか
- 読後に何を理解してほしいのか
- どの情報を図で見せるのか
- どの情報を文章で説明するのか
- 類似する本と何が違うのか
たとえば、「図解で健康について伝えたい」という相談を受けたとしても、それだけでは対象が広すぎます。
健康に不安を感じ始めた人に向けるのか。
特定のテーマを初めて学ぶ人に向けるのか。
毎日の生活で実践できる方法を示すのか。
体の仕組みを理解してもらうのか。
読者とゴールが変われば、選ぶ内容も構成も異なります。
最初から専門的な企画書を用意する必要はありません。
むしろ、相談の段階では、思いついたことや実現したいことを率直に伝えるほうが、企画の可能性を探りやすくなります。
重要なのは、アイデアを完成品のように見せることではありません。
何を本にしたいのか、その核を一緒に見つけていくことです。
図解を選ぶだけで、想定する読者は変わる
「文章だけの本より、図解本のほうが幅広い人に読んでもらえそうだ」と考える人もいます。
ところが実際には、図解という形式を選んだ時点で、読者像はある程度絞られます。
たとえば、「経済の仕組みを解説する本」と「図解でわかる経済の本」は、同じテーマでも読者の期待が異なります。
図解本を選ぶ読者には、次のような傾向が考えられます。
- テーマについて初めて学びたい
- 短い時間で全体像をつかみたい
- 長い文章を読むことに負担を感じる
- 複雑な関係を視覚的に理解したい
- 実践に必要な要点をすぐに確認したい
反対に、専門的な議論や細かな検証を求める読者にとっては、図解中心の構成が物足りなく映る可能性もあります。
つまり、「図解にする」という判断は、単なるデザイン上の選択ではありません。
どの読者に向けて、どの深さまで伝えるかを決める企画判断です。
ここを曖昧にしたまま進めると、図やイラストは多いのに、内容が頭に入らない本になりかねません。
情報を簡単にしすぎれば、読者が知りたかったことに届きません。
反対に、多くの情報を詰め込めば、図解である意味が薄れます。
図解本だから情報量を減らす、という単純な話でもありません。
読者が理解するために必要な情報を選び、関係を整理し、見える形に変える。
その設計が求められます。
技術営業は、相談内容を企画の条件へ置き換える
GBでは、企画の相談を受ける営業担当を「技術営業」と位置づけています。
見積もりや契約の窓口を務めるだけではありません。
相談者の中にあるアイデアを聞き取り、制作に必要な条件を整理する役割を担います。
GBで実際に多いのが、「図解モノをやりたい」という段階からの相談です。
この時点では、テーマや対象読者、ページ構成が決まっていないことも珍しくありません。
技術営業は、相談者が話した内容から企画の核になりそうな要素を拾い、想定読者や読後のゴール、図解で伝える意味を整理します。
そのうえで、必要に応じて編集者へつなぎ、章立てや見開きの展開まで具体化します。
すぐにページ数やデザインの話へ進むのではなく、まず確認するのは、次のような内容です。
誰に届けたいのか
年齢や職業だけでなく、そのテーマについてどの程度知っている人なのかを考えます。
初心者向けといっても、言葉を初めて聞く人と、興味はあるものの体系的に学んだことがない人では、必要な説明が違います。
何を持ち帰ってほしいのか
本の目的も整理します。
知識の全体像を理解してほしいのか。
日常生活で行動を変えてほしいのか。
判断の基準を身につけてほしいのか。
読後の状態を言葉にすることで、本に入れるべき内容が見えてきます。
なぜ図解にしたいのか
相談者が図解を希望する理由も重要です。
「分かりやすそうだから」という理由だけでは、どの情報を図にするべきか判断できません。
複数の要素の関係を示したいのか。
手順を見せたいのか。
文章では想像しにくい仕組みを視覚化したいのか。
図解に担わせる役割を決める必要があります。
技術営業は、こうした会話を通じて、相談者の言葉を、企画を組み立てるための具体的な条件へ置き換えます。
相談者が「とにかく読みやすくしたい」と話したなら、想定読者の知識量や文章量、見開きの情報量へ分解します。
「大事なことを全部入れたい」という希望があれば、本の中心となる情報と補足情報を分けて考えます。
この整理が、アイデアを企画へ変える最初の工程です。
編集者との連携で、切り口と構成を具体化する
読者とゴールが見えてきたら、必要に応じて編集者と連携します。
編集者が加わることで、企画は一冊の本として、より具体的な形になります。
主に検討するのは、テーマの切り口、章立て、見開き構成、文章と図の役割分担です。
企画の切り口を定める
同じテーマでも、切り口によって本の印象は大きく変わります。
テーマを網羅的に解説するのか。
身近な疑問から入るのか。
困りごとの解決を中心にするのか。
仕組みを知ることを中心にするのか。
ここで大切なのは、珍しい言葉をつけることではありません。
想定読者が「自分のための本だ」と理解できる入口をつくることです。
市場に似た本がある場合も、違いを無理につくるのではなく、読者、目的、情報の見せ方を確認します。
対象読者や読後のゴールが異なれば、同じテーマでも別の企画になり得ます。
全体の順序を組み立てる
情報が多くても、順序が適切でなければ、読者が最後まで読み進められる本にはなりません。
読者が最初に知るべきことは何か。
途中でどの知識が必要になるのか。
どこで具体例を入れると理解しやすいのか。
編集者は、読者がページをめくる順序に沿って情報を並べ直します。
著者や相談者にとっては当たり前の知識でも、初めて読む人には説明が必要です。
反対に、専門家が重要だと考える細部が、入門書の読者には重すぎる場合もあります。
削ることは、内容を軽く扱うことではありません。
限られたページの中で、読者が最後まで理解できる道筋をつくるための判断です。
図にする情報を選ぶ
図解本だからといって、すべてを図にするわけではありません。
図解に向いているのは、関係、比較、流れ、位置、分類など、視覚化によって理解しやすくなる情報です。
背景や理由、細かな条件、注意点は、文章で説明したほうが正確に伝わることもあります。
何を図にして、何を文章に残すか。
この分担を設計することで、ページが単なるイラスト付きの文章になることを防ぎます。
「読める本」に整えることが、企画の土台になる
内容が優れていることと、多くの人に読まれることは、必ずしも同じではありません。
著者の経験や知識に価値があっても、読者が途中でつまずけば、その価値は十分に届きません。
内容の良し悪しとは別に、本には「読める本」と「読みにくい本」があります。
読める本とは、文章が簡単な本だけを指しません。
- 誰に向けた本なのかが分かる
- 読み始めるための入口がある
- 情報の順番に無理がない
- 一つひとつのページに役割がある
- 見出しを追うだけでも流れが分かる
- 図と文章が同じことを重複していない
- 読者が次に知りたいことへ進める
こうした条件が整っている本です。
企画段階で読者像が曖昧だと、制作途中でも判断が揺れます。
専門用語をどこまで使うか。
具体例を増やすか。
図を細かくするか。
どの説明を削るか。
基準がないため、声の大きな意見や、その場の好みに引っ張られます。
読者ファーストでゴールを定めておけば、判断はしやすくなります。
「この情報は重要か」だけではなく、「この読者がゴールに到達するために必要か」と考えられるからです。
GBが企画を整理するときも、最初に完成形を決めつけるわけではありません。
技術営業が相談内容を受け止め、読者と目的を整理します。
必要に応じて、経験を積んだ編集者やデザイナーの知見を加え、実現可能な形へ調整します。
その往復によって、アイデアは少しずつ本の企画へ変わっていきます。
アイデアだけの段階で相談する利点
「もう少し内容をまとめてから相談しよう」と考え、長く止まってしまう人もいます。
しかし、企画が未整理な段階だからこそ、外部の視点が役立ちます。
自分一人で考えていると、伝えたいことと、読者が知りたいことを分けにくくなります。
経験が豊富な人ほど、どこから説明すればよいのか分からなくなることもあります。
早い段階で相談すれば、次の点を確認できます。
- 企画の中心になりそうなテーマ
- 想定できる読者
- 図解に向いている内容か
- 必要な情報や素材
- 著者自身が書く範囲
- 編集者やライターへ任せる範囲
- 本としてまとめる場合の大まかな方向性
相談したからといって、当初のアイデアを否定されるわけではありません。
一見すると素朴な発想でも、読者や目的を整理すれば、その人だからこそつくれる企画になる可能性があります。
この世に、最初から無駄だと決められる本のアイデアはありません。
誰に届け、何を持ち帰ってもらうのか。
そこを丁寧に整えることで、一人でも多くの読者へ届く形を探せます。
アイデアが企画になり、章立てになり、実際のページへ変わっていく。
その過程は、本をつくる人にとって大きな喜びです。
完成した企画だけを持ち込む必要はありません。
「こんな本があったらいい」という段階から、制作は始められます。
よくある質問
自費出版の相談時に企画書は必要ですか?
完成した企画書がなくても相談できます。
伝えたいテーマ、想定している読者、出版したい理由など、現時点で考えていることを共有してください。
会話を通じて、企画の中心や不足している情報を整理します。
図解本に向かないテーマもありますか?
テーマそのものよりも、何を伝えたいかによって判断が変わります。
関係性、比較、手順、構造を見せたい場合は図解が役立ちます。
一方、細かな論証や物語性を重視する場合は、文章中心の構成が適していることもあります。
アイデアが途中で変わっても問題ありませんか?
企画の初期段階では、内容や切り口が変わることは珍しくありません。
読者とゴールを整理した結果、当初とは別の構成が適していると分かる場合もあります。
変更を失敗と捉えず、企画を明確にする過程として検討します。
まとめ|「図解にしたい」の先にある目的を考える
「図解本をつくりたい」という希望は、企画を考える大切な入口です。
ただし、図解は表現方法であり、それだけで本の内容は決まりません。
企画を形にする際は、次の3点が重要です。
- 誰に何を届ける本なのかを先に決める
- 図解を選ぶことで変わる読者像を考える
- 技術営業と編集者が連携し、切り口と構成を組み立てる
企画の価値は、最初のアイデアが完成されているかどうかでは決まりません。
読者が理解できる形へ、どこまで丁寧に整えられるかが重要です。
お問い合わせ
「図解本をつくりたいが、テーマを絞り切れていない」「自分の経験を、どのような本にできるか知りたい」という段階でもご相談いただけます。
GBの技術営業がアイデアを伺い、必要に応じて編集者やデザイナーと連携しながら、読者とゴールを整理します。
- この記事の監修者
-
株式会社G.B.
雑誌・書籍・ムックの編集・出版を中心に、
その他にも広告媒体の企画・編集・制作著作権の管理・運用、翻訳、その他上記に付帯する一切の業務を行う。
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