書籍・冊子制作の相見積もりは失礼? 費用相場と問い合わせ前に伝えたいこと

初めて制作会社へ連絡する担当者のための、2026年版・費用と依頼条件の整理ガイド

「来期の周年事業で、記念誌を作ることになった」
「新しいサービスを紹介する冊子が必要になった」
「自社のノウハウを書籍にまとめたいと社長から言われた」

突然、書籍や冊子の制作担当になったものの、何から始めればよいのか分からない。
制作会社を探しても、Webサイトには「企画から編集、デザインまで対応します」と書かれているだけで、料金がほとんど載っていません。

問い合わせフォームを開いたあと、「こんな曖昧な状態で連絡してよいのだろうか」「相見積もりを取ると伝えたら失礼ではないか」「予算を伝えると、その金額いっぱいで見積もられないか」と考え、入力をやめてしまうこともあります。

結論からいえば、相見積もりを取ること自体は失礼ではありません。
ページ数や仕様が決まっていない段階でも、目的や現在の資料の状態が分かれば、相談を始められます。

本記事では、一般社団法人日本編集制作協会(AJEC)が公開している「編集制作業務料金基準表」も参照しながら、2026年時点での大まかな費用感と、初回問い合わせで伝えたい情報を整理します。

この記事の要点

  • 相見積もりであることより、各社へ同じ条件を伝えることが重要です。
  • 制作費はページ数だけでなく、原稿の状態、取材・執筆、図版点数、確認体制などで変わります。
  • 詳細な仕様書よりも、目的・材料・依頼範囲・納期・予算の目安を伝える方が相談は進みます。

相見積もりを取ること自体は、失礼ではない

企業が外部へ制作を依頼するとき、社内規定や価格の妥当性を確認するため、複数社へ相談することがあります。
制作会社へ「現在、複数社に相談しています」と伝えても、それだけで依頼を断られたり、印象が悪くなったりするものではありません。

ただし、相見積もりかどうかとは別に、依頼の仕方によっては制作会社が対応しにくい場合があります。

  • 翌日までに、詳細な見積書と企画書の提出を求める
  • 条件をほとんど伝えず、「最安値を出してください」とだけ依頼する
  • 各社から無償で具体的な企画を集め、その案を別の会社へ持ち込む
  • 他社の見積書をそのまま送り、「これより安く」と求める
  • 選定後、見積もりを依頼した会社へ結果を連絡しない

相見積もりが問題なのではありません。
候補会社にも、条件確認やスタッフ選定、原価計算などの作業が生じていることを踏まえて依頼することが大切です。

なぜ、書籍・冊子制作には料金表が少ないのか

印刷費は、判型、ページ数、色数、用紙、部数などの仕様が決まれば、比較的計算しやすい費用です。
一方で、書籍や冊子の「中身」を制作する費用は、完成物の仕様だけでは決まりません。

たとえば、同じA5判・128ページでも、完成原稿を支給して編集とDTPだけを依頼する案件と、資料整理、取材、執筆、撮影、図表制作まで任せる案件では、必要な仕事がまったく異なります。

完成物の仕様、業務範囲、原稿・資料の状態、確認体制、納期・進行条件が制作費を左右することを示した図

図1 制作費を左右する5つの条件

料金表が少ないのは、必ずしも価格を隠しているからではありません。
制作会社は、何ページ作るかだけでなく、完成までに誰が何を担うのかを確認して見積もります。

2026年時点の費用感を、AJECの料金基準から見る

編集プロダクションの業界団体である一般社団法人日本編集制作協会(AJEC)は、2025年2月13日現在の「編集制作業務料金基準表」を公開しています。
これは市場価格の平均値や統一料金ではなく、編集制作業務に対する適正な料金の目安として示されたものです。

以下では、初めて発注する担当者が費用構造をつかみやすいよう、書籍・カラー実用書・企業向け冊子に関係する代表的な項目を抜粋して整理します。

工程 AJECの基準例 補足
企画立案 15万円~ 文字主体の一般書。企画書作成や構成検討
編集料 60万円~ 原稿整理、台割、目次作成など
完成原稿の執筆 3,000円~/400字 取材がある場合は拘束費・経費が別途
リライト 1,500円~/400字 支給原稿を書き直す作業
表紙デザイン 15万円~ カバー、帯、本扉等。ビジュアル費は別途
本文フォーマット 8万円~ 目次、扉、奥付等は別途の場合あり
レイアウト・DTP 2,000円~/ページ 文字主体の一般書
校正 初校0.9円~/字
再校0.7円~/字
校閲を伴う場合は加算
編集管理費 総費用の5%~ 全体進行・管理に関する費用

表1 文字主体の一般書に関する主な基準

出典:日本編集制作協会「編集制作業務料金基準表」(2025年2月13日現在)をもとに整理

カラーの実用書や企業向け冊子では、編集・取材原稿・デザイン・DTPをページ単価で示している項目もあります。

対象・工程 AJECの基準例 条件
A5判・本文4色 編集料 1万5,000円~/ページ 取材先選定、スタッフ発注、原稿整理等
A5判・本文4色 取材・原稿執筆 1万5,000円~/ページ 取材拘束・経費は別途
A5判・本文4色 デザイン 8,000円~/ページ アートディレクションは別項目
A5判・本文4色 DTP 5,000円~/ページ カラー出力費等は別途の場合あり
取材撮影 5万円~/1件6時間 取材経費は別途
PR誌・会社案内 企画料 20万円~ 調査、企画立案、企画書作成を含む
PR誌・会社案内 編集料(A4) 3万円~/ページ 執筆者交渉、内容検討、校正を含む
PR誌・会社案内 編集料(B5) 2万5,000円~/ページ 執筆者交渉、内容検討、校正を含む
イラスト・カット 1万円~/点 サイズ・難易度等により変動
写真撮影 2万円~/カット 内容により変動。スタジオ代別途
DTP A4:1万円~/ページ
B5:8,000円~/ページ
企業向け冊子の基準
進行管理費 総費用の12% 見積もり時に計上

表2 カラー実用書・企業向け冊子に関する主な基準

出典:日本編集制作協会「編集制作業務料金基準表」(2025年2月13日現在)をもとに整理

注:AJECの基準は、各工程を個別に見た場合の目安です。
実際の案件では、工程の重複、原稿支給範囲、ページごとの密度、継続性などを踏まえて見積金額が調整されます。
消費税、印刷費、交通費、監修料、著作権使用料等は別途となる場合があります。

結局、本一冊・冊子一冊ではいくらになるのか

工程別の単価が分かっても、自社の案件の総額はまだ想像しにくいかもしれません。
そこで、AJECの基準と一般的な制作工程をもとに、印刷費を除く制作費の大まかなレンジを整理します。

原稿支給・文字主体、取材・執筆あり、カラー・図解多用の制作費レンジを比較した図

図2 制作費の大まかなレンジ(印刷費を除く)

100万~200万円程度:原稿がある文字主体の書籍

四六判またはA5判、160~200ページ程度で、本文原稿がほぼそろっている案件を想定します。
主な作業は、構成確認、編集、リライト、校正、装丁、本文フォーマット、DTPです。

ただし、「原稿がある」といっても、複数部署が別々に書いた原稿、プレゼンテーション資料の寄せ集め、文字起こしなどは、そのまま組版できません。
原稿の完成度によって、必要な編集・リライト費は変わります。

200万~500万円程度:資料整理・取材・執筆を含む書籍や周年誌

社内資料をもとに構成を考え、代表者や社員への取材から原稿を作成する案件です。
取材人数、資料の量、写真撮影の有無、確認者数などによって幅が生まれます。

費用が発生するのは取材当日だけではありません。
事前の資料確認、質問作成、文字起こし、原稿執筆、取材対象者への内容確認、修正対応なども制作工程に含まれます。

350万~800万円以上:図解・写真・イラストを多用するカラー制作物

企画・構成から依頼し、取材・執筆、撮影、多数の図表やイラスト、複雑な本文デザインを伴う案件です。
ビジュアル点数が増えるほど、編集者による情報整理、ラフ作成、デザイナーやイラストレーターへの指示、確認作業も増えます。

たとえば、イラストを1点1万円で40点制作すれば、イラスト費だけで40万円です。
図表も、完成データを支給する場合と、文章や数値から構造を考えて作成する場合とでは費用が異なります。

「200万~300万円の予算」で考えられること

  • 文字主体の書籍であれば、構成、取材、執筆、編集、デザインまで依頼できる可能性があります。
  • カラー書籍や冊子では、ページ数、撮影日数、イラスト・図表点数を調整する必要があります。
  • 必須工程とオプションを分けて見積もると、予算内で優先すべき内容を判断しやすくなります。

最初の問い合わせで伝えたい7つの情報

問い合わせ時点で、何十ページもの仕様書や詳細な台割を用意する必要はありません。
次の7項目が分かるだけでも、制作会社は必要な工程を整理しやすくなります。

制作物、目的・読者、材料の状態、依頼範囲、希望納期、予算、選定予定の七項目を示した図

図3 問い合わせ前に整理したい7項目

1

何を作りたいのか

書籍、社史・周年誌、会社案内、採用パンフレット、商品・サービス紹介冊子など、想定している制作物を伝えます。
名称が分からない場合は、「書店販売ではなく、取引先へ配布する冊子」といった説明でも構いません。

2

何のために、誰へ届けるのか

営業で使うのか、採用候補者へ渡すのか、社内資料として残すのか。
目的と読者によって、適切な構成や文章、デザインは変わります。

3

現在、どこまで材料があるのか

完成原稿、社内資料、Webサイト、写真、過去の冊子など、使えそうな材料と、その整理状況を伝えます。
「資料はあるが、原稿にはなっていない」も重要な情報です。

4

どこまで依頼したいのか

企画、構成、取材、執筆、編集、校正、デザイン、印刷のうち、どこを任せたいかを伝えます。
分からない場合は「役割分担から相談したい」と書けます。

5

希望する納期

「なるべく早く」ではなく、展示会、式典、採用活動など、実際に使う日を伝えます。
希望日が現実的か分からない場合も、その旨を添えて相談できます。

6

想定している予算

予算が分かれば、制作会社は優先順位、必須工程とオプション、簡略化できる条件を提案しやすくなります。
未確定なら「社内予算を検討するため、まず費用感を知りたい」と伝えます。

7

相見積もりの有無と選定予定

「3社に相談しており、来月上旬に委託先を決定予定」など、選定時期を簡単に伝えます。
他社名や他社の金額まで知らせる必要はありません。

予算を伝えると、上限いっぱいで見積もられないか

予算を開示すると、その金額に合わせて高く見積もられるのではないかと心配する担当者もいます。
しかし、書籍・冊子制作では、予算によって選べる制作方法が変わります。

たとえば、予算が分かれば、既存資料を再編集するのか、追加取材をするのか、撮影を行うのか、イラストや図表を何点制作するのかを検討できます。
予算を伏せたままでは、制作会社は最低限の内容で安く出すか、不確定要素を見込んで余裕を持った金額を出すしかありません。

正確な予算が決まっていなくても、次のような伝え方ができます。

  • 200万~300万円程度を想定しています。予算内で可能な進め方を提案してください。
  • 上限は300万円です。必須項目とオプションを分けてください。
  • 予算は未確定です。社内稟議のため、標準的な案と簡略化した案の概算を知りたいです。

「200ページの本はいくらですか」を、少しだけ具体的にする

初めての担当者が、必要な情報を伝えられないのは珍しいことではありません。
専門用語を使うより、現在分かっていることと、分からないことを分けて伝える方が有効です。

情報が少ない問い合わせ 相談を始めやすい問い合わせ
会社の本を作りたいのですが、200ページの場合はいくらですか。 当社の創立50周年に合わせ、社員と主要取引先へ配布する記念誌を検討しています。A5判・100~150ページ程度を想定していますが、構成は未確定です。過去の社内報や沿革資料はありますが、原稿として整理されていないため、資料整理、取材、執筆、編集、デザインまで相談したいと考えています。来年3月の式典で配布するため、2月中の納品を希望します。現在は複数社へ相談しており、費用感と進め方を確認したうえで社内予算を検討する予定です。

表3 初回問い合わせの伝え方

この段階で、正確なページ数や台割は不要です。
制作会社は、提示された情報をもとに、追加で確認すべき条件を整理できます。

相見積もりは、総額だけを比べない

同じ「社史制作」「書籍制作」という名称でも、各社の見積書に含まれている仕事が同じとは限りません。
見積金額に差があるときは、安いか高いかを判断する前に、次の条件をそろえて確認します。

比較項目 確認すること
業務範囲 企画、取材、執筆、編集、デザイン、印刷のどこまで含むか
発注者側の作業 原稿作成、写真手配、社内意見の集約を誰が担うか
修正条件 修正回数、大幅変更、校了後修正の扱い
外部費用 撮影、交通費、素材費、監修料、印刷費等が含まれるか
納品物 印刷物、PDF、画像、編集可能な制作データの範囲
進行体制 担当者、取材・執筆者、デザイナー、校正者の体制
前提条件 ページ数、取材人数、図版点数、納期などの想定

表4 相見積もりでそろえて確認したい項目

金額差の理由が分からなければ、「どの作業が差につながっていますか」と聞いて構いません。
見積もりの内訳を確認することは、値下げ交渉ではなく、業務範囲の認識を合わせるための作業です。

費用を調整したいときは、「値下げ」より「条件」を相談する

社内予算と見積金額が合わない場合、「他社より高いので安くしてください」とだけ伝えても、制作会社は何を変更すればよいか判断できません。
目的を大きく損なわずに費用を調整するには、工程や条件を相談します。

  • 取材人数や撮影日数を減らす
  • 新規撮影ではなく、使用可能な写真を支給する
  • 原稿のたたき台や資料整理を社内で行う
  • ページ数や図表・イラスト点数を調整する
  • 印刷費を分け、制作費と比較できるようにする
  • 必須工程とオプション工程を分ける
  • 納期を延ばし、短納期による進行負担を避ける

制作会社にとっても、「この予算で目的を達成するには、何を優先すべきか」という相談の方が、現実的な提案をしやすくなります。

生成AIの概算は、問い合わせ前の予算づくりに使える

現在は、生成AIに判型、ページ数、取材人数、図版点数などを入力すれば、公開されている料金表や制作会社の記事をもとに、おおよその価格帯を確認できます。
社内で最初の予算枠を考える用途には役立ちます。

ただし、生成AIは実際の原稿や資料の状態までは判断できません。
同じ「原稿支給」でも、そのまま組版できる完成原稿と、複数の資料を組み直す必要がある原稿では、編集作業が大きく異なります。

また、確認部署の数、決裁者が確認する時期、著者・監修者との調整、短納期なども、正式な見積もりでは重要な条件です。
生成AIの概算は予算検討の入口として使い、最終的には資料を見せて制作会社へ確認するのが現実的です。

問い合わせは、見積もりを確定する場ではなく、条件を整理する入口

初回の問い合わせだけで、正式な見積金額が確定するとは限りません。
まずは提供された情報から概算を出し、その後の打ち合わせや資料確認を経て、正式な見積もりを作成することもあります。

新人担当者が、最初から制作工程や相場を理解し、完璧な依頼書を書く必要はありません。
分からないまま専門用語を並べるより、「初めての制作で、どこまで依頼すべきか分かっていない」と伝えた方が、前提を確認しながら進められます。

問い合わせ前に必要なのは、正確なページ数や業界用語ではありません。
何を、何のために作るのか。
現在どのような材料があり、いつまでに、どの程度の予算で進めたいのか。
決まっていることと、相談したいことを分けて伝えれば、制作会社との話は始められます。

書籍・冊子制作の条件整理からご相談いただけます

株式会社ジー・ビーでは、書籍、社史、周年誌、会社案内、パンフレットなどの企画・編集・取材・執筆・デザインに対応しています。

ページ数、構成、予算、依頼範囲が決まっていない段階でも、現在の資料や目的を確認しながら、必要な制作工程を整理します。

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参考資料・出典

1. 一般社団法人日本編集制作協会(AJEC)「編集制作業務料金基準表」―2025年2月作成 掲載ページ

2. 一般社団法人日本編集制作協会(AJEC)「編集制作業務料金基準表」(2025年2月13日現在) PDF資料

※料金表の確認日:2026年7月22日。
本記事の総額レンジは、上記基準と一般的な制作工程をもとに記事用に整理した参考値です。
個別案件の見積金額を保証するものではありません。

投稿者

  • 眼鏡をかけたスーツ姿の担当者のプロフィール写真

    出版社・編集プロダクションで、営業窓口、案件統括、事業戦略、採用、社内IT運用などを横断して担当。
    書籍・冊子・Webコンテンツの企画相談から、制作体制の設計、見積もり、スケジュール調整、業務改善まで、発注者と制作現場の間に立って実務を進めている。
    本メディアでは、編集プロダクションへの発注方法、本づくりの進め方、制作費やスケジュールの考え方、営業・AI活用などについて、現場で起きやすい認識のずれや失敗例も踏まえながら、発注者・制作者双方に役立つ情報を紹介する。

この記事の監修者
株式会社G.B.

株式会社G.B.

雑誌・書籍・ムックの編集・出版を中心に、
その他にも広告媒体の企画・編集・制作著作権の管理・運用、翻訳、その他上記に付帯する一切の業務を行う。

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