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“いい本”はこの段階でほぼ決まる!~構成編~
編集プロダクションでは、書籍やMOOKなど1冊まるっと請け負うことが多いですが、では本はどんなプロセスを経て制作されているか、社歴20年超の編集者が簡単に説明します。
出版社から制作依頼がきます。
一般的に企画書、スケジュール、予算がセットです。
余談ですが、編集プロダクションでは出版社のことを、出版物の企画・制作・販売を一手に担った業者を指す言葉である「版元(はんもと)」と呼ぶことが多いです。
STEP1
企画書を精査、因数分解します。
版元からきた企画書は企画を通すために“盛った”内容になっていることがほとんどです。
巻頭インタビューや監修の先生が超有名人だったり、MOOKでは「このページ数でこんなたくさんの人に取材するの!?」などなど、とにかく内容がてんこ盛りです。
そこでスケジュールや予算と照らし合わせ、何をやるべきか・捨てるべきかを版元の担当者と打ち合わせて精査します。
「これを実現するには、あと20万円ないとムリですね」「このスケジュールでは作れません」など、できないこと・予算やスケジュールに見合わないことは、はっきりと伝えます。
そこで担当者の優先順位がはっきりします。
優先順位は以下の3パターンにほぼ分かれます。
- 内容は薄くてもいいので発売日を優先(出版ノルマ達成型)
- 指名の監修者でないと出版しない。
企画書に準ずるため予算を増やす、スケジュールを延期する(内容重視型) - 核になる部分は残し、見送る部分もあり。
著名人などが獲得できたら予算が増える(①と②のいいとこ取り)
もちろん制作サイドとしても「できません」ばかり言っていられません。
企画者の想いにもなるべく応えたい気持ちがあるため、「この企画は取材者から写真を提供してもらえばできますね」「以前、お仕事した〇〇先生なら監修費も抑えられます」など、過去の実績や経験をもとに具体的な軌道修正を提案します。
そういった話し合いをすることで、版元の担当者の企画の解像度が上がるので、「この内容はなしでいいです」「これはサブのコラム程度でもいいかも」と“この本では何を伝えたいのか”の軸ができます。
STEP2
その軸をもとに、本の設計図とも言える「台割(だいわり)」を作ります。
台割は流れとボリューム感が重要です。
巻頭にもっとも読者に読んでもらいたいものを据え、そこを軸に、その後の流れが自然になるような配置をします。
レシピ本を例にすると、主役になるメインのおかずからスタートし、その脇役となるサブおかず、最後のほうにスイーツを。
料理中心の本でスイーツからはじまるレシピ本はありえないということです。
章立てもだいたい同じくらいのボリューム感になるように調整します。
96PのレシピMOOKで半分以上を占める50Pをメインおかずに割くのは、バランスが悪いです。
仮にメインおかずがそのくらいあるのであれば、それらをさらに因数分解し、コンパクトなブロックに分けます。
「肉が主役のおかず」「魚介類が主役のおかず」などです。
また個人的ではありますが、ちょっとした息抜きのページも必要だと思っています。
全ページ全力投球の本も素晴らしいですが、この息抜きのページが区切りの役割をしたり、デザインも変わることで1冊を通したときのアクセントになります。
章ごとの間に入るコラムや、巻末に入るちょっとした読み物などが、息抜きのページに当たります。
もちろん制作していく段階で矛盾が生じることも多々あるので、進めていく過程で臨機応変に台割を変更していきます。
STEP3
台割が確定したら、デザインフォーマットを作成します。
メイン読者層をコアに据え、デザイナーにダミー素材を渡し、企画の内容を説明します。
個人的にはデザインについては具体的な指示出しはせず、重要となるポイントや仕組み部分を説明します。
細かいクリエイティブな部分はプロのデザイナーにお任せ、という形が、編集者以外のアイデアやクリエイティブも加わり、相乗効果が生まれると思っています。
デザインフォーマットが上がってきたら、全体的な雰囲気、本を開いたときに一番目に入るタイトル・大キャッチ部分のあしらい、デザインやフォント、目立つ大きさであるか、本文の詰まり具合(文字の大きさ・行間・字間)が適切であるかどうかをジャッジします。
イラストが入る場合は、タッチによって誌面がガラリと変わるので、事前にどういうタッチがいいのか版元の担当者に聞き、数名提案して選びます。
デザインフォーマットが決まったら、制作段階における構成は終了。
構成は、企画内容の整理、台割作成、デザインの方向性を決める、の三段階です。
制作期間における「構成」は1割ほどですが、この軸があるかないかで、いい本になるかどうかは決まると言っていいと思います。
この土台がないと、実際の制作過程がゆらぐので、時間がかかったり、修正が多くなったり、ときには初校(頭からお尻まで揃った本の第一段階)出し後に大幅な修正が入ります。
一からとは言いませんが、作り直しレベルの大工事が発生したことも何度か経験しています。
本作りにおいてもっとも時間がかかる~制作編~
台割、デザインフォーマットが確定したら、それに従い、あとはひたすら制作に突き進みます。
制作とひと口に言っても、やるべきことは多岐にわたります。
リサーチ、資料まとめ、ラフ作成、ライターやイラストレーターへ発注、企業への掲載許諾……などなど。
特にMOOK制作においては、取材者やレシピ提供者への依頼や確認が多いときは10名ほどと同時にやり取りをします。
制作において折衝する時間は想像以上にボリュームがあります。
ときには1日中折衝メールのやり取りだけで、クリエイティブな仕事ができなかった……などということもあります。
方々に依頼して返ってきた素材をまとめ、デザイナーにすべての素材をブロックごとに提出します。
「編集」は糸を編んで集めると書きますが、この素材をまとめ・整えるのも時間がかかる作業です。
そしてブロックごとにデザイン組みされたものが上がってくるので、商品として提出していいものかどうか校正します。
これを内校と言います。
内校でポイントとなるのは、密度のバラつきを整える作業です。
素材を整えて密度計算していたつもりでも、いざデザインに落とし込んでみると、「スカスカしている」「ギュウギュウで読みにくい」「この配置は読みにくい」「各素材がルール化されていない」などが生じます。
その違和感をひとつひとつ、つぶしていきます。
8割くらい形を作っておき、内校で残り2割を補完するイメージです。
また制作段階ではブロックごとに作業しているので、1冊を通して見たときの印象が変わってくることもあります。
1冊トータルでの統一感をこの段階で整えるのがベスト!
内校の時間が多くあると、初校のクオリティが爆上がりします。
逆を言うと、内校の時間がなければないほど初校の仕上がりが低くなります。
制作段階において仕上げとも言える内校の時間を取るため、逆算して細かいタスクのスケジュールを決め、クリアできなかったときのためのバッファの時間も組み込んでおくことが制作においては重要です。
間違いがない商品へと昇華させる!~校正編~
初校を提出したら、あとは間違いがないかを見つけていく作業です。
ある意味、楽しさやクリエイティブを求める作業は、初校までです。
間違いがない本にするには編集者だけでは成り立ちません。
そこで重要なのが「校正者」という第三者の目線。
だいたい1週間ほどかけて、全ページをチェックしてくれます。
数字や固有名詞などの間違ってはいけない部分はもちろん、読者が誤解しそうな言いまわしにもチェックが入ります。
日本語として正しいか、表現がかぶっていないかもチェックしてくれます。
ただし、校正者の赤字だけを直せばいいわけではありません。
著者や監修者がいればその赤字があり、版元担当者の赤字もあるので、多いときは3~4種の赤字を1つの赤字へと集約します。
校正者からの疑問がメモとして書き込まれている場合は、それを著者・監修者・取材者など、その本(またはページごと)の主役となる方に確認を取り、反映させます。
赤字がすべてまとまったら、デザイナーに修正してもらいます。
その赤字が直っているか確認する作業を「突き合わせ」や「赤字払い」と言います。
90%くらいの赤字は修正できますが、赤字が見えにくかったり、赤字の意図が通じていなかったり、編集者の赤字自体が間違っていることもあるので、残りの赤字を細かくつぶしてゼロにし、再校(第二段階目)を提出します。
校正は版元からの依頼時にセットで組み込まれているパターンと、編集プロダクションから校正会社へと依頼するパターンがあります。
一般的に校正は2回で、1回目で細かくチェックし、2回目はその赤字がきちんと直っているかをチェックする校正のため、おのずと再校の赤字は初校よりも減ります。
この再校出しのタイミングで印刷データを仮入稿し、試し刷りをして色味をチェックします。
モノクロの書籍の場合は特に問題が起こることはないですが、画像が多いMOOKは、この色校と呼ばれる試し刷りをチェックするのも大事な作業のひとつです。
料理の場合はおいしそうに見えなかったり、芸能人が誌面に登場する場合は、タレントさんのイメージにも関わるため、事務所が色校をチェックするというケースもあります。
色味の赤字は基本的には印刷所で修正しますが、予算によってデザイナーが元データを加工・補正する場合もあります。
その再校赤字を修正し、三校(第三段階目)を提出し、最後の最後の最終赤字を修正し、念校(第四段階以降)を提出し、最終OKとなったら校了となり、印刷所へ印刷データを送り、編集プロダクションの制作はフィニッシュとなります。
細かいことを言うと、外注スタッフなどへの経理処理などの雑務があります。
この一連の流れを、長い媒体では1年から半年、短いものでは1か月ちょっと(!!)で行うのが編集プロダクションの制作プロセスです。
書籍・MOOK制作についてご相談ください
株式会社ジー・ビーでは、企画・構成、台割作成、デザイン、取材・原稿制作、進行管理、校正まで、案件に応じて制作工程をご相談いただけます。
「企画はあるが、どう組み立てればよいか分からない」「制作体制やスケジュールから相談したい」といった段階でも、お気軽にお問い合わせください。
- この記事の監修者
-
株式会社G.B.
雑誌・書籍・ムックの編集・出版を中心に、
その他にも広告媒体の企画・編集・制作著作権の管理・運用、翻訳、その他上記に付帯する一切の業務を行う。
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