2026.01.08

インタビュー

初めてのレシピ本制作で、つまずかないために。

初めてレシピ本を担当することになったとき、
正直に言うと「何から考えればいいのか分からない」という気持ちの方が先に立ちました。

撮影当日、私は何を判断すればいい?
どこまで自分が踏み込んでいい?

本記事では、そんな不安を抱えがちな
新人編集者や、初めて料理撮影に関わる方に向けて、
20年以上レシピ本・暮らし・美容分野の制作を手がけてきた
ジー・ビーの編集者・森本さんに、
現場のリアルな話をたっぷり聞かせてもらいました。

読み進めるうちに、
「それ、私もやりがちです…!」
「そこまで考えていいんだ…!」
と、何度も頷いてしまうインタビューになりました。

「良いチームを組むことが、すべての始まり」

―― レシピ本制作で、いちばん大切にしていることは何でしょうか。

森本:
「まずは、スタジオとカメラマンをきちんと押さえることですね。
ここがブレると、どれだけ頑張っても仕上がりのラインが上がらないんです。」

この答えを聞いたとき、正直少し意外でした。
企画や章立て、レイアウトのことばかり考えていて、
「チームをどう組むか」をここまで最初に考える発想が、
自分にはまだ足りていなかったからです。

森本さんは、料理人のタイプを見極めながら、
フードコーディネーターやスタイリストを含めて
撮影チーム全体を組み立てていきます。

森本:
「料理人といっても、本当にいろいろな方がいます。
調理師免許などの資格を持っている方、メディア出演に慣れている方、初めての方。
撮影慣れしている方だと、先方にチームがあって、
器まで撮影向きのものが揃っていることもありますね。

逆に”初めて”の方だと、全部お任せになることも多いですね。」

この話を聞いて、
“料理人”と一括りにして、「料理に関することなら何でもできるのだろうな」とざっくり考えていた自分に気づきました。

有名な料理人だからといっても、撮影に関して慣れているというかどうかは聞いてみないと分からない。

この思い込みのまま撮影当日を迎えていたら、かなり危なかったな…と後から実感しました。

―― 事前にチェックリストを使うことはありますか。

森本:
「漏れを防ぐ意識は大事なんですが、
最初からリストで固めすぎると、逆に動けなくなることもあります。
『これがない』『全部そろえなきゃ』って考えすぎると、
進行が止まってしまうんですよ。」

耳が痛かったです。
「準備不足が怖い」という理由で、
全部自分で抱え込もうとして、
結果的に失敗したことが、何度も頭に浮かびました。

森本:
「無いなら無いで、どう見せるかを考えればいいんです。
優先順位をつけて”強みを立てる”のも誌面づくりです。
『やらなきゃ』じゃなくて、『こうしたらもっと良くなる』を一緒に考えていける打ち合わせになるよう、
私自身も企画を楽しんでいます。」

―― とはいえ、準備漏れが怖くなることはありませんか。

森本:
「ありますよ。いつでも悩みます。
リストで確認しても全部は見切れないんですよ。
特に食材は、編集者が買うと分からないことも多いですし、
無駄が出やすいので、基本は料理人の方に用意をお願いしています。
でも、人間なので忘れることもあります。
だから事前に、誰が動けるかを確認しておく。
ご家族やスタッフの方にフォロー役をお願いして、
役割分担を作るんです。」

私は、先方のご家族やスタッフに協力してもらうというような発想ができなかったです。

私が任された仕事ですから、
むしろ、手を煩わせない方がいいんじゃないかとも。

でも、話を聞いて、よく考えていくと、料理人の方と普段から一緒にいる人たちの方がよっぽどフォローが上手いのは当たり前ですよね。

“誰が誰のフォローに適しているか”まで含めて、座組の全体を考えるのが編集なんだと、
ここでようやく実感しました。

「撮影はライブ。止めずに、考えながら進める」

―― 撮影現場で意識していることは?

森本:
「基本は各分野のプロに任せています。
ただ、誌面としてどう見えるかは、編集の仕事ですね。
角度、構図、食材が全部見えているか。雰囲気が読者とズレていないか。
そこは見ていますね。」

例えば、
箸で食べる料理なのにフォークが添えられていたり、
本来は取り皿を使わない料理に、
きれいな取り皿が置かれていたり。

スタイリストの美意識が先に立って、料理としては不自然な配置になることもあるそうです。
「きれいだし、プロがやっているし、まぁいいのかな…」と
流してしまいそうになる場面だな、と思いました。

―― 専門家が集まるからこそズレが起きることもあるのですね。

森本:
「そうですね。その分野では”正しい”としても、
誌面としては『これ、実際にはこう食べないよね。』という違和感が出ることもあって。
そういう時は止めます。
誌面として間違っているので。」

この「止めます」という一言が、
想像以上に重く感じました。

現場の空気を止めるのって、
正直かなり勇気がいります。

でも、誰も悪くないからこそ、
編集者が判断しないといけない。

―― たくさんの判断をしながら、撮影をされているのですね。

森本:
「ええ、特に時間の判断が重要です。
下ごしらえが重い料理は早めに仕掛け、
コロッケやハンバーグのような工程の多い料理を優先、
片付けの時間も忘れないようにします。
皆帰れなくなりますから。(笑)
一つ一つの工程が終わるごとに、誌面に当てた場合どうなるかをイメージしながら、
『このままだと終わらないな』と思ったら、段取りを微調整します。
思考も行動も、先へ先へと進ませていく。
ミュージシャンがライブをやる時もこうなのだろうな、と思う時がありますね。」

他にも、黒コショウをかけ忘れた場合に、
別カットの素材で補うことがある、という話も印象的でした。

その話を聞いた途端、「撮り直ししかない」と思い込んでいた自分にとっては、
完全に目からうろこで、
撮影現場を離れてからも、戻らずに“進み続けていく”ものなんだと
考え方が少し変わった気がします。

「レシピ文章は、迷わせないことがいちばん」

―― レシピ文章の整理で大切にしていることはなんでしょうか?

森本:
「表記の揺れは残さないことですね。
『サバ』『さば』『鯖』みたいに、
どれを使うかはジャンルや読者層で変わります。
大事なのは、読者が迷わないこと。
表記の統一ルールを決めます。」

「正解を探す」というより、
「読者が迷わないかどうか」。

編集の判断軸って、
いつも「読者のため」なんだな、と身が引き締まりました。

「“かわいい”は、女性読者の感覚を信じる」

―― イラストレーター選びについて教えてください。

森本:
「女性向けのレシピ本は、世界観がすごく大事です。
小物や人物の雰囲気がズレると、
読者はすぐ違和感を覚えます。」

ここで、個人的に思い出したことがあります。

以前、
「かわいいとは思うけれど、何か違う気がする」
と判断に迷ったことがありました。

どこが違うのか、言葉にできない。
でも、しっくりはこない。

あとから振り返ってみて、
そのイラストを強く推していた編集の方が男性だったことに気づきました。

イラストレーターの方は女性でしたが、
その「かわいい」は、
男性編集者が感じた感覚を、
きちんと女性の表現として翻訳したものだったのだと思います。

ただ、そのときふと感じたんです。

「この企画での“かわいい”って、
女性同士じゃないと共有しきれない前提や空気感があるんだな」と。

森本:
「そうなんです。
“誰のかわいいか”がズレると、
仕上がりにも微妙な違和感が出やすいんですよね。
だから私は、
女性読者が見て自然に受け取れるかどうかを基準にしています。」

なるほど、と思いました。

可愛いかどうかを決めるのは、
編集者個人の感覚ではなく、
その本の読者が、どう受け取るか。

レシピ文章と同様、一貫して、「読者目線」で判断する。

森本さんの言葉を聞いて、
「かわいい」を判断するという行為が、
感覚論ではなく、
読者視点を揃える編集作業なのだと、気づきました。

「魅力を全部伝えようとして、伝わらなくなることもある」

―― ちなみに、表紙はどのように決めていますか。

森本:
「表紙のイメージは最初に版元の方に聞きます。
集合カットを希望されることも多いですが、
意外とボツになりやすいんですよ(笑)。
魅力をいっぱい伝えたい!というのは分かるんですけど、
情報は順序と大小、取捨選択が大事なので。」

「全部載せたい」気持ちと、
「伝わる表紙」にする判断は別。

ここでも、森本さんが積み重ねてきた柔軟さと対応力を感じました。

「普段の暮らしの感覚が、誌面の”リアル”を作ってくれる」

―― お母さんとして料理をしてきた経験は、編集に活きますか?

森本:
「めちゃくちゃ活きますよ(笑)。
盛りつけが“きれいすぎる”とか、“こんな量じゃ足りないよね”とか。
日常的に料理していないと、気づきにくい違和感ってあるんですよね。」

ここで「実家が仕出し屋だった」という話を聞いて、驚きました。
普段の暮らしの感覚だけじゃなく、
「段取り」「大量の工程を回す」みたいな経験が、編集に直結しているんだな…と。

森本:
「田舎だったので、全部の料理がその時間に揃ってないとダメだったんです。
だから段取りとタイムキープは自然と身につきましたね。」

私は「知識やコツを学べば追いつける」とどこかで思っていましたが、
それだけじゃなくて、
自分の中に“仕切る経験”が積み上がっているかどうかが大事なんだと気づきました。

「編集者として成長するには、もっと小さな規模でもいいから、“監督する側”の経験を意識的に増やした方がいいのかもしれない」
と、そんなことを考えさせられました。

「失敗すること、挑戦することを恐れずにやってみる」

―― 最後に、これからレシピ本や暮らし系ムックを作りたい方へ。

森本:
「プロも最初は素人です。
私も沢山失敗しましたし、今なら完璧というわけではありません。
それでも好きな気持ちがあれば、今足りないものを一つ一つ身に付けられると思います。
今はこんなインタビューのように経験者の話を聞ける機会や相談できる場所も多いので、昔よりずっと成長しやすい環境だと思います。
それでも選択肢が多過ぎて、誰にどう相談すればいいだろうと
不安に思う方がいましたら、
お問い合わせフォームから気軽に相談してください。
『森本に相談したい』と書いてもらえたら大丈夫です(笑)。」

インタビューを終えて

インタビューを終えて、
「最初から全部分かっていなくてもいいんだ」と
少し気持ちが楽になりました。

同時に、
「こういう時、自分ならどう判断するんだろう」
と考えてしまうくらい、
この仕事を“自分ごと”として想像している自分にも気づきました。

これまで私は、
レシピ本づくりを
「経験者だけが出来る特殊な仕事」
のように見ていたのかもしれません。

でも実際は、
毎回条件が違う中で、
誰かが判断し続けている仕事。

その役割を、
いつか自分も担うのだと思うと、
少し怖くて、でも楽しみにも思えるようになりました。

まずは、次の現場で、
どんな判断をすることになるのか。
それを少し楽しみにしながら、
また仕事に向き合ってみようと思います。

お問い合わせのご案内

「レシピ本を作りたいけれど、何から相談すればいいか分からない」
「撮影や進行に不安がある」
そんな段階であっても、まったく問題ありません。

企画の途中でも、構想段階でも大丈夫です。
まずは一度、当社のお問い合わせフォームから
お気軽にご相談ください。

このインタビューで語られていたような
“現場を知る編集の視点”を共有しながら、
一緒に本づくりを考えていければと思います。

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この記事の監修者
株式会社G.B.

株式会社G.B.

雑誌・書籍・ムックの編集・出版を中心に、
その他にも広告媒体の企画・編集・制作著作権の管理・運用、翻訳、その他上記に付帯する一切の業務を行う。

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