編集プロダクションは印刷もできる?
出版・冊子制作の分業を解説
企画・原稿・デザイン・印刷を、どこまで誰に頼めるのか
会社案内、社内報、採用冊子、周年誌、マニュアル、商品カタログ。
企業がこうした冊子を作ろうとしたとき、意外と分かりにくいのが「どの会社へ、どこまで頼めるのか」という問題です。
編集プロダクションへ相談したら、企画や原稿の制作だけでなく、印刷まで対応してもらえるのでしょうか。
先に答えると、編集プロダクションの中心業務は、企画、取材、執筆、編集、デザインなどの「内容を作る工程」です。
自社で印刷工場を持っている会社は一般的ではありません。
ただし、提携する印刷会社へ発注し、印刷・製本・納品までまとめて進行できる編集プロダクションもあります。
確認すべきなのは、「印刷機を持っているか」ではなく、どの工程から相談できるのか、印刷会社の手配や印刷工程の管理まで任せられるのか、という二点です。
この記事の要点
- 完成した印刷用データがある場合は、印刷会社へ直接依頼できる。
- 企画、取材、原稿作成、構成整理が必要な場合は、編集プロダクションなどの制作会社が必要。
- 編集プロダクションが印刷会社を手配し、印刷・製本・納品まで一括して管理する場合もある。
記事の目次
「印刷できる」と「印刷まで頼める」は違う
まず整理しておきたいのが、「印刷できる会社」と「印刷まで頼める会社」の違いです。
印刷会社は、印刷機や生産設備を持ち、印刷、製本、加工などを行います。
一方、編集プロダクションは、冊子の目的を整理し、必要な情報を集め、読者に伝わる構成や文章、デザインへ仕上げる会社です。
そのため、多くの編集プロダクションが印刷機を動かしているわけではありません。
しかし、編集プロダクションが窓口となり、企画から印刷会社への入稿、色校正、製本、納品までをまとめて請け負うことはあります。
| 企画・構成 | 取材・撮影 | 執筆・編集 | デザイン・DTP |
|---|---|---|---|
| 校正 | 印刷会社への入稿 | 色校正・仕様確認 | 印刷・製本・納品 |
この場合、実際に印刷するのは印刷会社ですが、発注者は編集プロダクションへまとめて相談できます。
したがって、「印刷もできますか」と尋ねるより、「印刷会社の選定や見積もり、入稿、納品まで含めてお願いできますか」と確認した方が、対応範囲を正確に把握できます。
図1 冊子制作の主な工程と担当領域
冊子は、一社だけで作っているとは限らない
完成した冊子を見ると、一つの会社が最初から最後まで作ったように見えます。
しかし、実際には工程ごとに複数の会社や専門職が関わることがあります。
| 工程 | 主に担当する会社・職種 | 発注時に確認したいこと |
|---|---|---|
| 目的・読者の整理 | 発注企業、出版社、編集プロダクション | 何のために作り、誰に届けるのか |
| 企画・構成 | 出版社、編集プロダクション | ページ構成や取材内容まで任せられるか |
| 取材・執筆 | 編集者、ライター、編集プロダクション | 取材対象者、撮影、原稿確認の方法 |
| 写真・図版制作 | カメラマン、イラストレーター、制作会社 | 点数、権利処理、二次利用の範囲 |
| 編集・校正 | 編集プロダクション、校正者 | 修正回数と最終決定者 |
| デザイン・DTP | デザイン会社、編プロ、印刷会社のDTP部門 | 印刷仕様に合うデータを作れるか |
| 印刷・製本・加工 | 印刷会社、製本会社 | 用紙、部数、加工、色校正、納期 |
| 梱包・発送・納品 | 印刷会社、物流会社、制作会社 | 納品先、分納、在庫保管の有無 |
| 書店流通・販売 | 出版社、取次会社、書店 | 市販書籍として刊行するのか |
これはあくまで一般的な分け方です。
印刷会社がデザインやDTPまで行うこともあれば、編集プロダクションがデザイン、印刷手配、納品管理までまとめて担当することもあります。
出版社が編集実務を社外の編集プロダクションへ依頼する場合もあります。
会社名や業種だけで判断するのではなく、その会社がどの工程を自社で担当し、どの工程を外部の会社と進めるのかを確認することが重要です。
依頼先は「何を作るか」より「どこまでできているか」で選ぶ
同じ「冊子を作りたい」という相談でも、発注時点の状況によって適した依頼先は変わります。
パンフレットだから印刷会社、本だから出版社、と制作物の名前だけで決める必要はありません。
重要なのは、何が完成していて、何がまだ決まっていないのかです。
図2 準備状況から考える依頼先の判断フロー
印刷用データが完成しているなら、印刷会社へ
原稿、写真、ページ構成、デザインがすべて完成し、印刷会社の入稿仕様に合ったデータが用意できている場合は、印刷会社へ直接相談できます。
印刷会社では、部数、サイズ、用紙、色数、製本方法、加工、納期などを確認し、印刷費を見積もります。
ただし、「文章と写真がそろっている」ことと、「印刷用データが完成している」ことは同じではありません。
WordやPowerPointに文章と画像を貼り付けただけの状態では、印刷物としてのレイアウトやデータ調整が必要になることがあります。
印刷会社にDTP部門があれば、支給された原稿を流し込み、ページを組むところまで対応できる場合もあります。
一方で、全体の構成を考える、原稿の内容を整理する、取材して文章を作る、必要な情報と不要な情報を判断するといった作業は、単なるDTPではなく編集の領域です。
原稿や資料が整理されていないなら、編集プロダクションへ
企業が「原稿はあります」と話していても、実際に確認すると、完成原稿ではなく素材が集まっているだけということがあります。
過去の会社案内、社内プレゼンテーション、社長の挨拶文、会議の議事録、社員アンケート、製品資料、写真が大量に入った共有フォルダなどです。
これらは冊子を作るための大切な材料ですが、そのまま誌面へ掲載できるとは限りません。
誰に何を伝える冊子なのかを決め、情報の優先順位を整理し、必要に応じて追加取材を行い、ページごとの役割を設計する必要があります。
編集プロダクションは、こうした「材料はあるが、まだ冊子にはなっていない状態」から、企画、構成、取材、執筆、編集、図表制作、デザイン、校正までを組み立てます。
まだ「作りたい」しか決まっていなくても相談できる
企業からの相談では、原稿や構成どころか、作る媒体自体が決まっていないこともあります。
「創立記念の年なので、会社の歩みを何らかの形で残したい」「採用活動で、自社の仕事をもっと分かりやすく伝えたい」といった段階です。
この段階で、いきなりページ数や印刷部数を決めることはできません。
誰に届けるのか、何のために作るのか、どのような資料が社内に残っているのか、紙で作る必要があるのかを考える必要があります。
こうした初期段階では、冊子の制作実績があり、企画から相談できる編集プロダクションや制作会社が候補になります。
作りたいものが完全に決まっていなくても、「何を作るべきか」から相談できる会社はあります。
書店で販売したい場合は、出版社への相談が必要
企業内で配布する冊子を作ることと、一般の読者へ販売する書籍を出版することは同じではありません。
書店やオンライン書店で販売する場合は、書籍としての企画、価格、発行部数、販売方法、在庫、販促なども考える必要があります。
ISBNは出版物を識別するための国際的な番号ですが、番号を付けて印刷すれば自動的に書店流通できるわけではありません。
市販書籍として刊行する場合は、出版社、取次、書店との流通や販売の仕組みが必要です。
書店で販売したい、出版社名で刊行したい、販売や宣伝まで任せたいという場合は、出版社へ相談する必要があります。
ただし、出版社へ企画を持ち込めば必ず商業出版できるわけではありません。
企業が費用を負担して制作する企業出版や、販売を主目的としない冊子制作とは、条件や契約が異なります。
印刷会社から編集プロダクションへ依頼されることもある
企業が、普段から看板、封筒、パンフレット、販促物などを依頼している印刷会社へ、冊子制作について相談することもあります。
印刷会社が社内のDTP部門で対応できる場合もありますが、企画、取材、執筆などが必要であれば、印刷会社が編集プロダクションやライター、デザイン会社へ協力を求めることがあります。
これは、印刷会社と編集プロダクションによる特別な異業種連携というより、案件に必要な専門会社を組み合わせる通常の制作体制です。
発注企業にとって重要なのは、各社の関係を詳しく理解することではなく、誰が窓口となり、どこまで責任を持って進めるのかが明確になっていることです。
図3 冊子制作でよくある発注・契約のパターン
外部の制作会社が加わる場合は、契約と情報共有も確認する
企業の冊子制作では、社外秘の資料や未公開情報を扱うことがあります。
発注企業名や案件名、予算、経営計画、社内組織、人事情報、未発表の商品、入札・コンペ資料、個人情報などです。
印刷会社が外部の編集プロダクションへ見積もりを依頼する場合も、内容や作業量が分からなければ、制作可否や費用を判断できません。
一方で、守秘義務の取り決めがなければ、印刷会社側も案件の詳細を外部へ開示できないことがあります。
そのため、継続的に案件を相談する会社同士では、詳細情報を共有する前にNDA(秘密保持契約)を締結することがあります。
NDAは、協業関係を大きく見せるための契約ではなく、見積もりや制作体制を具体的に検討するために必要な情報を安全に共有する土台です。
外部会社を交えて制作するときの確認項目
- 発注企業との窓口はどの会社か。
- 見積書はどの会社がまとめ、制作費と印刷費を誰へ支払うか。
- 制作会社が発注企業と直接打ち合わせできるか。
- 修正指示と最終承認を誰が取りまとめるか。
- 印刷会社の指定、再委託の可否、情報共有の範囲。
- 不成立になった案件の資料や見積情報をどう扱うか。
編集プロダクションへ相談する前に整理したいこと
最初からすべてを決めておく必要はありません。
ただし、次の項目が分かると、制作会社も必要な体制や費用を検討しやすくなります。
1.何のために作るのか
採用、営業、広報、社内共有、記録保存など、目的によって内容は変わります。
2.誰が読むのか
社員、顧客、求職者、取引先、一般読者など、対象を整理します。
3.現在、何があるのか
完成原稿、社内資料、写真、過去の冊子、取材候補者など、使えそうな材料を確認します。
4.どこから依頼したいのか
企画から必要なのか、原稿整理からなのか、デザインだけなのか、印刷まで必要なのかを伝えます。
5.販売するのか、配布するのか
書店販売する書籍と、社内外へ配布する冊子では、必要な体制が異なります。
6.印刷会社が決まっているか
既存の取引先へ印刷を依頼する場合は、その印刷会社へ入稿する前提で制作できます。
7.機密情報を扱うか
NDAが必要な場合は、資料を渡す前に契約の進め方を相談します。
編集プロダクションによって、対応範囲は異なる
編集プロダクションと一口にいっても、得意分野や対応範囲は会社によって異なります。
出版社から一般書籍の編集だけを受託している会社もあれば、企業の広報物、社史、周年誌、Webコンテンツなどを制作している会社もあります。
また、取材・執筆・編集のみ、デザインとDTPまで、印刷用データの納品まで、印刷会社の手配まで、印刷費を含めた一括受注、発注者指定の印刷会社への入稿、発送先の整理や分納まで、と対応工程にも違いがあります。
依頼前には、過去の制作実績だけでなく、どこまで一括して進められるかを確認することが大切です。
関連記事:編集プロダクションの基本的な役割は「編集プロダクションとは?」でも紹介しています。
株式会社ジー・ビーの場合
株式会社ジー・ビーは、出版社と編集プロダクションの両方の機能を持つ制作会社です。
出版社から依頼を受ける一般書籍の制作に加え、自社での書籍出版、企業の社史・周年誌、会社案内、自治体関連冊子、入札・コンペ案件などにも取り組んでいます。
企画、取材、執筆、編集、図表制作、デザイン、印刷用データの作成まで、案件に応じて制作体制を組むことができます。
印刷会社がすでに決まっている場合は、指定された印刷仕様に合わせてデータを制作し、入稿まで進めることも可能です。
また、印刷会社、広告代理店などから、編集・制作部分のみをご相談いただく案件にも対応しています。
案件の詳細を共有する前にNDAが必要な場合も、ご相談いただけます。
冊子制作の依頼先や、必要な制作体制がまだ決まっていない場合もご相談ください。
まとめ:どこに頼むかは、現在地から考える
編集プロダクションの中心的な役割は、企画、取材、執筆、編集、デザインなど、冊子の中身を作ることです。
印刷機を持っていなくても、印刷会社と連携して印刷・製本・納品まで管理できる会社はあります。
依頼先は業種名だけで判断せず、現在どこまで準備できているかを整理して選びましょう。
- 印刷用データが完成しているなら、印刷会社へ。
- 内容や構成から考えるなら、編集プロダクションへ。
- 書店で販売するなら、出版社へ。
- すべてまとめて任せたいなら、対応範囲を確認して制作会社へ。
- この記事の監修者
-
株式会社G.B.
雑誌・書籍・ムックの編集・出版を中心に、
その他にも広告媒体の企画・編集・制作著作権の管理・運用、翻訳、その他上記に付帯する一切の業務を行う。
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